「勉強は部活に必要か」 慶大卒・山縣亮太は“書き癖”で成績も、タイムも伸ばした
ちょっと前の自分に言いたい、「もうちょっと、勉強を習慣化しておけよ」って
「例えば、海外に出た時、なぜ日本の短距離選手が記録を出せないか、ずっと理解ができなかった。環境、サーフェスなど、要因はいろいろと言われるけど、本来は出せたはずのタイムが出せなくなってしまうことが分からない。自分なりに安定性を意識して競技に取り組むようになった。それが結果として出てきていると感じている」
山縣はリオ五輪の100メートル準決勝で当時の自己ベスト10秒05をマークしたことが証明しているように、海外、レース展開、大舞台を問わず、強さを発揮。それは、従来の日本人スプリンターと一線を画す。海外に行くと、結果が残しにくい原因については「自分のパフォーマンスを理解し切っていないんじゃないか」と考えている。
「隣のレーンに立っている選手の国籍、人種、あるいは食事が違うとか、いろんな要素を細かく分け、自分のパフォーマンスをコントロールできるかどうか。体の状態、技術、メンタルはどうか。そういうものが安定していれば、海外に行っても結果が出せると思う。空気が違う、食事が違うことなどは僕は大した問題になったことはない」
こうした背景があり、山縣は今、速いだけじゃなく、強いスプリンターとしての地位を築きつつある。その一部となったのは“学び”から培ったものだ。今、勉強する意味を見い出せない青少年アスリートたちに向け、こんなことを考える。
「勉強というのは学ぶことを習慣にするもの。そのために必要な取り組みだと思う。どういう学習内容かは関係ない。学び続ける姿勢がなければ、上に行けない。自分のキャリアでも思うのは伸び悩んだ時、そこから抜け出せた時はハングリー精神があった。その粘り強さを身に着けたのが勉強の場。そうして論理的に考える癖がつけば、陸上、スポーツにとっても凄くいいことと思う」
目標を立て、課題を見つめ、挑戦と反省を繰り返し、成長していく。そんな作業は、9秒台を目指すそれと似ているように感じる。山縣は「それは、あると思います」と言って笑い、こう続けた。
「ちょっと前の自分にも言いたい。『もうちょっと、勉強を習慣化しておけよ』って。そうすれば、あの時の時間のロスはなかった、もっと早く答えに辿り着いていたなと思うところがあるから」
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)