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全中7位、陸上部のない慶應女子高から全国決勝へ 「ちゃんとやれ」叱る人も不在…自分を律し、鼓舞し、再び辿り着いた場所――松田冴

ホットスタッフフィールド広島で7月25日から5日間行われた陸上インターハイ。熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、困難な環境の中で競技を続けてきた選手などさまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は女子100メートルに出場した慶應女子の松田冴(3年)。中学で全中7位を経験したが、高校に陸上競技部がなく、クラブチームや個人での練習を重ね、再び全国の決勝に進出。一時はスランプに陥り「陸上が楽しくない」と辞めることも考えたが、諦めなかった理由とは――。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

陸上部のない慶應女子から100メートル決勝に進出した松田冴【写真:荒川祐史】
陸上部のない慶應女子から100メートル決勝に進出した松田冴【写真:荒川祐史】

陸上・インターハイ 女子100メートル/慶應女子・松田冴(3年)

 ホットスタッフフィールド広島で7月25日から5日間行われた陸上インターハイ。熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、困難な環境の中で競技を続けてきた選手などさまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は女子100メートルに出場した慶應女子の松田冴(3年)。中学で全中7位を経験したが、高校に陸上競技部がなく、クラブチームや個人での練習を重ね、再び全国の決勝に進出。一時はスランプに陥り「陸上が楽しくない」と辞めることも考えたが、諦めなかった理由とは――。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

 苦しい日々を越え、またここに辿り着いた。

 100メートルの予選。真っ直ぐにレーンを見つめ、深呼吸をして集中力を高めた松田は、ゆっくりとスターティングブロックに足をかけた。低い姿勢から飛び出して加速。競り合う展開の中、後半も粘って2着でゴールした。12秒02(向かい風0.8メートル)の自己ベストを記録。着順で通過し、インターハイ決勝24人のスタートリストに「松田冴」の名前を載せた。

“普通”とは少し違った高校陸上だった。

 陸上競技を始めたのは慶應義塾中1年の時。部活動に所属し、3年時の全中では7位入賞を果たした。ただ、進学した慶應女子高に陸上競技部はない。「自分の得意なことが陸上だったので、ここで辞めてしまうのも……」と迷った末に続けることを決めた。

 授業は午前8時10分から始まり、午後2時40分に終わる。部活勢はそのまま練習に直行するが、松田は東京タワーに程近い港区の校舎から1時間かけていったん帰宅。午後7時から郊外にあるクラブチームの練習に向かう。2時間程度を週に4回。それ以外の日は開放されている競技場を利用して、教わったことを繰り返す。

 記録が伸びることに楽しさを感じていた中学時代。そこから大きく環境が変化し、スランプに陥った。求めている結果が出せない日々。「本当に辛くて。メンタルも弱くなって良いイメージが湧かなくなった。陸上が楽しくなくて、好きなところも分からなくなった」

 1、2年生は南関東総体の準決勝止まり。中学時代に走った全国決勝は夢のまた夢。辞めようと思ったこともある。学校生活だけなら、内部進学できれば受験もなく、今よりゆとりのある日々を過ごせる。それでも諦めなかったのは、誰よりも自分を信じていたからだ。

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