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偏差値75の九州御三家から全国8位に 勉強は文系1位、今も公衆電話…「プラチカ」封印し、死ぬ気で腕を振った高校ラスト100m――青雲・下田慶

決勝ラスト100メートル、死ぬ気で腕を振って組1着でゴールを駆け抜けた【写真:荒川祐史】
決勝ラスト100メートル、死ぬ気で腕を振って組1着でゴールを駆け抜けた【写真:荒川祐史】

東大文科二類志望「ここまでに費やした練習があれば、きっと受験も…」

 ラスト100メートルのスパートは競技生活4年間、そして17年間の人生をかけた意地だった。

 1分50秒49。

 昨年は県準決勝敗退ながら、全国決勝で自己ベストを3秒更新。800メートルを始めた1年間で11秒も縮めた。ゴール前で抜かしたのは昨年の全中王者。島原を出る時、夢見た広い世界をまさに描いたような日本中の強豪と渡り合い、入賞した。

「出場できるだけでうれしかったのに、全国でたくさん陸上をやっている人がいる中で8番に入れるなんて。練習時間も少なかったけど、ハンデと思わず、青雲で入賞者としてこの場所に立てて……」

 そして、言葉に感慨を込めた。

「陸上、続けてきて良かったな」

 これで部活は引退する。スパイクを脱げば、参考書と格闘する日々が始まる。次に目指すのは赤門の向こうだ。

 夏休みは8月9日から10日間だけ。

「今日このまま長崎に帰って、明日は普通に授業。1限目は現代文ですね、はあ……」と苦笑いする。志望は東大文科二類。「東大の文系は数学で差がつきやすい。文系こそ数学。今は(参考書の)『青チャート』で基礎を繰り返して『プラチカ』で考えを磨いてます」

 ここから半年で東大合格は簡単ではない。ただ、12歳で故郷と親元を離れ、常に勝負できる場所を求め、挑戦し続けた彼は知っている。

 正しい努力をすれば、結果はついてくる。本気でやれば、環境も時間も言い訳にならない、と。

 それを教えてくれたのは、他でもない陸上だ。

「ここまで来るために費やした練習があれば、きっと受験だって乗り越えられる。この経験よりつらいことなんてないと思うから」

 封印した参考書の重さと、全力で駆けた日々のまぶしさ。その両方に彩られた下田慶の青春は、来春、咲く桜とともに完結する。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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