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SNSでバズった「7校連合」卒業し夢の単独出場 たった2人で始めた高校野球、12人で終えた最後の夏――平塚農商・成川佑星

高校野球の第107回全国選手権神奈川大会が9日、バッティングパレス相石スタジアムひらつかなどで開幕。近年7校の多校連合で出場していた平塚農商は単独出場を叶えたが、1回戦で橘に0-16の5回コールド負け。目標の夏1勝はならなかったものの、主将の成川佑星中堅手(3年)は、中高を通じて初の単独出場に。部活紹介で“一発ギャグ”を披露するなど、部員集めに奔走した2年間だった。(THE ANSWER編集部・戸田 湧大)

打席に立つ平塚農商の主将・成川佑星、ベンチには勧誘した仲間たちが見守っていた【写真:戸田湧大】
打席に立つ平塚農商の主将・成川佑星、ベンチには勧誘した仲間たちが見守っていた【写真:戸田湧大】

第107回全国高校野球選手権・神奈川大会

 高校野球の第107回全国選手権神奈川大会が9日、バッティングパレス相石スタジアムひらつかなどで開幕。近年7校の多校連合で出場していた平塚農商は単独出場を叶えたが、1回戦で橘に0-16の5回コールド負け。目標の夏1勝はならなかったものの、主将の成川佑星中堅手(3年)は、中高を通じて初の単独出場に。部活紹介で“一発ギャグ”を披露するなど、部員集めに奔走した2年間だった。(THE ANSWER編集部・戸田 湧大)

 どれだけ点差が離れようとも笑顔を絶やさなかった。初回に2点を失い、3回に6点、4回に8点と畳みかけられた。0-16。心が折れてもおかしくない状況。それでも、成川は「下を向いていたら取れるものも取れない」とキャプテンとして前向きに声をかけ続けた。チームは最後まで一球一打に食らいつき、敗れてなお晴れやかな表情が夏の青空に映えた。

 1つの学校でチームを組む。多くの高校からすれば当たり前のことを夢見た2年間だった。中1から始めた野球。高校入学後は受験勉強のことを考えて入部しなかったものの、熱心な先生の誘いもあり「高校でもプレーしたい」と翻意。だが、入部当初の部員は、成川と同級生の守屋來夢(3年)の2人だけ。公式戦は連合チームでの参加を余儀なくされた。

 2年生になると下級生が2人入部したものの、連合からの脱出は叶わない。夏は2年続けて7校の多校連合で出場。全校を表示するため、チーム名が地元放送局のスコア速報で文字が潰れて読めず、SNSで話題になったこともある。各校の地域も異なるため、練習場所まで最大で往復5時間ほどかかった。3000円以上の運賃や、選手同士のコミュニケーション不足に悩まされ続けた。

 最後の夏こそ単独出場を――。成川が目を付けたのが、新入生向けの部活動紹介だった。「楽しい野球部であることを伝えたい」。その一心で身体を張った一発ギャグを披露。ハリセンなどの道具を使い、体育館を爆笑に包みこんだ。以降も1年生の教室に出向き、勧誘を続ける日々。白球への情熱は6人の1年生に届き、ついに単独出場の夢を叶えた。

 目標だった1回戦突破はならず。それでも、部員12人で挑んだ最後の夏。スコアボードに表示された「平塚農商」の文字が、成川には誇らしかった。「1年生が良いプレーをしてくれた。気持ちは負けていない」と下級生の成長に目を細める。たった2人で始めた物語。続きは後輩たちが紡いでいく。

(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)

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