授業中に出場校発表も「学業優先で…」 21世紀枠候補校当日のリアル、部員スマホ断ち&全校生徒口止め
第96回センバツ高校野球(3月18日開幕・甲子園)の選考委員会が26日に開かれ、出場校32校が選出された。21世紀枠は別海(北海道)、田辺(和歌山)の2校が選ばれ、「学生野球の父」と呼ばれた飛田穂州氏の母校・水戸一(茨城)は落選。悲願のセンバツ初出場を逃した。毎年ひきこもごものドラマがある出場校発表の舞台裏。水戸一も伝統校であり、進学校ならではの“リアル”があった。
無念の落選となった21世紀枠候補・水戸一発表当日の裏側
第96回センバツ高校野球(3月18日開幕・甲子園)の選考委員会が26日に開かれ、出場校32校が選出された。21世紀枠は別海(北海道)、田辺(和歌山)の2校が選ばれ、「学生野球の父」と呼ばれた飛田穂州氏の母校・水戸一(茨城)は落選。悲願のセンバツ初出場を逃した。毎年ひきこもごものドラマがある出場校発表の舞台裏。水戸一も伝統校であり、進学校ならではの“リアル”があった。
「飛田先生のお参りをしてきた」「(水戸一の試合を)全試合見ているから」「あと5分……」。部員らに先駆け、21世紀枠の発表を聞いたのは同校OBたちだった。1954年夏に出場して以来の甲子園行きに期待を膨らませ、学校に集合。午後3時30分。運命の発表が始まると談笑ムードは終わり、一様に祈り始める。だが……。無念の結果にため息、そしてしんみりとした空気が部屋に流れた。
午後4時20分。報道陣も取り囲む中、少し緊張した面持ちで飛田穂洲像の前に集合した水戸一ナイン。御厩祐司校長が姿を見せると、26人が2列で整列。21世紀枠の落選を伝達された。ただ、表情は変わらない。真剣な眼差しで話を聞き終えると、御厩校長の声掛けで飛田像に一礼し、いつものように練習に向かった。
この日は同校OBで学生野球の発展に貢献し、野球殿堂入りした飛田氏の命日。「飛田穂洲先生の命日ということは知っていて、甲子園を愛した方だと聞いているので、水戸一として甲子園に縁があるのかなと話を聞いていました」。主将の津田誠宗内野手(2年)は朗報を信じたが、その願いは叶わなかった。
1878年創立の県内最古の伝統校であり、偏差値73ともいわれる県内屈指の進学校。センバツ初出場の知らせを待ったこの日も、いつも通りに授業を受けた。部員は全員スマートフォンの通知をオフに。「野球部全員が校長先生の話で知りたいというのが第一にあったし、水戸一として学業優先、勉強第一を念頭に置いている。発表された15時半は授業の時間だった」。前日の全校集会では、教員から全校生徒に結果の口止めをし、情報を遮断した。
伝達時には窓から様子を見守る生徒の姿も。OBはもちろん、学校を挙げて願った70年ぶりの聖地凱旋は、あと一歩届かなかった。それでも「この期間にやってきたことは間違いなかったと確信している」と津田は胸を張る。21世紀枠の候補に選出されてから「センバツに出るつもりでの取り組みが素晴らしかった」と木村優介監督に評価されるほど、真剣に野球と向き合ってきた自負がある。
エースの小川永惺投手(2年)はこうも言った。「甲子園に出られるチャンスが1つ潰れたのは悔しいけど、自分としては負けて甲子園に行きたくなかった。そこはプラスに捉えるなら選ばれなくて良かったのかなと思っている」。2年生にとって、夢舞台への道はあと1回。創立145年の伝統校の期待を背負い、夏の甲子園を目指す。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)