WBCの熱狂の裏で中学軟式野球に迫る危機 10年で部員数が半減、少子化だけではない要因
部員数減少に危機感、「川口市野球人口増加プロジェクト」が発足
武田さんも長瀬さんも野球が古くからの国民的スポーツだったことで、黙っていても選手は集まるという慢心と無策が、今の深刻な状況を招いたと口を揃える。
プロ野球・巨人で大活躍した斎藤雅樹を生んだ川口市は、野球の盛んな土地柄だが、15年に安行東中の軟式野球部が部員不足で休部。強豪校でも部員が減り続ける窮状を好転させようと、川口市中体連軟式野球専門部は17年2月に『川口市野球人口増加プロジェクト』を立ち上げた。
県中体連軟式野球専門部の事業部長を務め、活動の中心でもある武田さんは「安行東中の休部が直接のきっかけですが、小中学生の野球人口が激減し、中学ではちょうど合同チームが結成され始めた時期でした」と設立経緯を説明すると、「野球を始める中学生の拡大というより、少年野球に入る前の子供を増やすことに知恵を絞りました」と述べる。
普及活動の目玉になったのが「サークルベースボール」と呼ばれるもので、野球未経験の児童が安全に楽しめるゲームを考案した。柔らかいバットとボールを使い、投手は打ちやすい球を投げて三振はなし。打者は打ったら15メートル走り、5メートルごとに加点される仕組みだ。
武田さんは「サークルベースボールを通じて野球の楽しさを感じ、少年野球を始めるきっかけにしてもらうことが狙いでした」と所期の目的をこう話した。
長瀬さんが前任地の越谷市立大袋中学に勤務していた17年は、1学年の部員が4人で野球経験者は1人という状況だった。「中学生の野球人口減少も顕著ですが、30年近く前には越谷市内に150もあった少年野球チームが、今は34に激減しました。誰でも手軽に楽しめるのが野球の魅力ですから、本来あるべき姿に戻したかった」と一念発起し、昨年4月1日に『野球の街越谷』実行委員会を立ち上げ、会長に就任した。