7割の教職員が休日指導に前向き 部活動の地域移行、情熱注ぐ顧問と専門コーチの価値
スキル向上は大切だが「この年代は教育的配慮が必要」
教職員へのアンケートでは、とても興味深いデータがあった。
「休日の指導を希望するか?」との設問に3人に1人が望まないと回答した一方、好きな競技を自由に選択できるなら希望するを45%の教職員が選び、現在受け持つ担当競技を継続できるならにも22%が望むなど、条件付きながら合わせて7割近くが休日の指導に前向きだった。
余暇を削っても、部活動に情熱を注ぐ教師は大勢存在するようだ。
昨年10月にスタートしたモデル事業の2期目は選定基準を大幅に変え、顧問教諭が休日の指導に負担を感じる競技を中心に選んだ。1期目に採用した軟式野球とバレーボールが外れ、陸上、卓球、ソフトボールが新たに加わった。前述した生徒のやりたい種目アンケートで4位だったプログラミングは、今年度からダンスとともに合同クラブとして設立された。
指導員の採用や派遣のほか、謝金の支払い、学校施設の鍵の管理などは、昨年7月に委託したスポーツデータバンク社が引き受ける。同社はこれまで、文科省や経済産業省が担う学校部活動に関する事業を手掛けてきた実績があるだけに、登録する指導員も多士済々だ。
女子ソフトボール部の指導に当たる松本風香さんは、日本リーグ1部NECプラットフォームズの元選手で、日本が優勝した2013年の第10回世界女子ジュニア選手権U-19日本代表の内野手だった。
南中で初体験の指導現場に立ち、「自分の考えを上手に伝えるのって難しいですね。表現の仕方を意識するようにしています」と言う。南中の女性顧問はソフトボールが専門外とあり、初回講習会で意見交換した。「まだ基礎を習っていなかったので、基本を中心に練習していきますと伝えた」と松本さん。地域クラブ活動については「私たちのような専門性のあるコーチが指導する環境を整えるのは、生徒にとってはすごくいいことだと思う」と所感を述べた。
同じく南中で男女陸上部を担当する柿沼俊平さんは社会人まで競技を続け、インターハイには砲丸投げで出場。柔道整復師の資格もあり、これまで複数の競技で五輪代表選手らのトレーナーも務めてきたが、今回のような形で中学生と向き合うのは初めてだ。
柿沼さんは「スキル向上は大切ですが、この年代は教育的配慮が必要なのでそこも心掛けています」と話し、「顧問の先生は陸上が専門ですが、先生と私の教え方がかけ離れてもいけないので、ある程度はすり合わせている」と説明。文科省の試みには「教員の働き方改革など、時代背景を考えたら変化も必要なんでしょうね。誰にとっても有益な方向に進んでほしい」と理解を示した。