五輪V3柔道家・野村忠宏氏の言葉「特別な人だけが結果を残せるのではない」
「未来の自分に期待する」決意
そして1年時に迎えた初の公式戦では残酷な現実が待っていた。初戦で対戦した女子選手にまさかの敗北。中学時代はなかなか体が大きくならなかったこともあり、以降も目立った成績を残すことはできなかった。それでも自分の意志で選んだ柔道。簡単に諦めることはなかったという。
その根底には、祖父から最初に教えてもらった「背負い投げ」があった。大好きなこの技で強くなりたいという思いで練習に取り組んだ。努力はしたが、なかなか試合では勝てない。それでも練習中、ごくたまに強い相手を背負い投げで投げる瞬間に喜びを感じた。
「今は試合に勝てない、努力してもなかなか実を結ばない。でもこの技を信じて真剣に磨き続けていけば、いつか自分はすごい選手になれるんじゃないか。だから今辞めるのはもったいない。未来の自分に期待しよう」
弱かった中学時代、野村さんはそう思い続けたのだという。
その後は、父・基次さんが監督を務める天理高に進学。厳しい練習を積み、高校3年時にようやく県大会で優勝。高校総体への出場権を獲得した。「俺は強くなってきてるな、今の俺なら全国でベスト4はいけるなと思っていた」。しかし結果は1勝もできずに予選リーグで敗退となる。