ユースから異例の“移籍” 青森山田エースが“高校サッカーの10か月”で掴んだもの
ラストワンプレーの後悔「ああいうところで決めなければ、自分がいる意味がない」
そして、3回戦の長崎総科大付戦。後半アディショナルタイムに突入し、0-1のビハインド。敗戦が目前に迫る中、必死でボールを追い続ける中村の姿があった。ここで決めれば、チームを助けられる。熱のこもったプレーが、そう語っていた。
ラストプレーの場面。ピッチ中央の中村にボールが渡る。味方にボールを預け、ゴール前へと駆け上がる。ワンツーを狙ったパスは相手選手に当たってしまうも、それが功を奏し、走り込んでいた中村の目の間に転がってきた。
「自分がこれまで何度も決めてきた得意なコースだった。ファーストタッチも完璧。あとは本当に決めるだけだった。だけど、肝心なところで、力んでしまった」
相手DFの対応が追いつかない中、ボックス左に侵入した中村はフリーで左足を振り下ろした。しかし──。ボールは無情にもゴール右へと逸れていった。その軌道を見た瞬間、中村は頭を抱えながらピッチに倒れ込んだ。数秒後、試合終了を告げる笛スタジアムに鳴り響くことになった。
「あの場面が頭の中でずっと繰り返されている。たぶん、しばらくはあの瞬間を、忘れることはできない。ああいうところできっちりと決めなければ、ここに自分がいる意味がない」