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「誰に対しても全力勝負です」 高校生に“本気を出した”重量挙げ・三宅宏実のエール

ウエイトリフティングで五輪2大会連続メダルを獲得した三宅宏実(いちご)が、29日に配信された「オンラインエール授業」に講師として登場した。「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する企画。三宅はインターハイ中止という経験から前を向く全国の高校ウエイトリフティング部を対象に授業を行い、全力で立ち向かうことの大切さなどを伝えた。

「オンラインエール授業」に登場した三宅宏実
「オンラインエール授業」に登場した三宅宏実

ついに最終回、ラストは女子ウエイトリフティング界の第一人者・三宅宏実が夢授業

 ウエイトリフティングで五輪2大会連続メダルを獲得した三宅宏実(いちご)が、29日に配信された「オンラインエール授業」に講師として登場した。「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する企画。三宅はインターハイ中止という経験から前を向く全国の高校ウエイトリフティング部を対象に授業を行い、全力で立ち向かうことの大切さなどを伝えた。

【注目】「大人の私も受けたい」とネット話題 誰でも観られる「オンラインエール授業」はこちらから(過去のアーカイブ動画も視聴可能)

 三宅が登場した「オンラインエール授業」はインターハイ実施30競技の部活に励む高校生をトップ選手らが激励し、「いまとこれから」を話し合おうという企画。ボクシングの村田諒太、柔道の井上康生さん、バドミントンの福島由紀と廣田彩花、バレーボールの大山加奈さん、サッカーの仲川輝人ら、現役、OBのアスリートが各部活の生徒たちを対象に講師を務めてきた。

 37回目の今回がついに最終回。ラストを飾ったのが2012年ロンドン五輪銀メダル、16年リオ五輪銅メダルの三宅だ。1968年メキシコシティ五輪で銅メダルに輝いた義行さんを父に持ち、伯父・義信さんも60年ローマ五輪で銀メダル、64年東京五輪とメキシコシティ五輪で金メダルを手にした。そんなリフターの血を受け継いだ日本女子の第一人者は、高校生や指導者ら約70人の前でこう挨拶した。

「私は高校から(本格的に)競技を始めて原点になっています。コロナで大会がなくなって厳しい1年になったと思いますが、みんなの部活の状況、練習の調子、心の状態が凄く気になっていたので、いろんなことをお話しできたらと思います」

 高校2年だった02年8月に全国高校女子選手権53キロ級を大会記録で制すと、3年時の03年6月に全日本選手権で初優勝した。48キロ級に転向し、06年世界選手権で銅メダル。五輪以外にも輝かしい実績を誇る三宅を画面越しに目の当たりにした高校生は、少し緊張しながらも憧れの人の話に聞き入った。

 最初に三宅が説明したのは、ウエイトリフティングを始めた理由だった。中学入学後は1年間だけ手芸部に所属し「外に見えるテニス部がいいなと思って」と2年からソフトテニス部に入ったという。しかし、熱中するほどではなく「私は全く夢がなくて何をやっても中途半端。飽き性で全く続かなかった。中学時代、何か夢中になれるものが欲しいとずっと思っていました」とモヤモヤを抱えた当時を振り返った。

 血の滲む努力で世界と戦ってきた人の意外な過去。高校生の真剣な眼差しを浴びたメダリストは、まだ何者でもなかった青春時代の話を続けた。

 本格的にスポーツをしたことがなかった普通の女子中学生。進路を考え始めた頃に「何か人と違う人生を歩んでみたい」という思いが芽生えた。この夏に出会ったのが五輪の夢舞台。シドニーで輝くウエイトリフティングの選手たちに胸を打たれた。「女性でもこれだけできるんだと感動しました。何かにトライしたい。オリンピックに夢をもらった一人です」。2人の兄も取り組んでいだウエイトリフティングの世界に飛び込む決意をした。

 しかし、世界を知る父から覚悟を試されていた。

「その時、父との条件が2つありました。1つ目はオリンピックでメダルを獲ること。2つ目は途中で諦めない、逃げ出さないこと。それまでスポーツの厳しさがわからなかったので、オリンピックってみんな行けると思っていたんです。でも、実際にウエイトリフティングを始めると、なんて難しい競技なんだろうと。目指すと言ったけど、オリンピックに行くまでの道のりが長いと感じました」

 実家の台所が練習場となり、父のマンツーマン指導を受ける日々が始まった。埼玉栄高に進学。「とにかく高校3年間はもの凄く練習した。父から叩き込まれましたね」。基礎から徹底的に教わった。バーベルを挙げる際、休憩のインターバルも1分以内と細かく設定。「1セット終わったら次の瞬間から準備をしなさい」と言われ、すぐに呼吸を整えた。

「人の2、3倍やらないとお前は強くならない。普通のことをしたらそのままだよ」。厳しい言葉を胸に、与えられたメニュー以上をこなした高校時代。「それがあったので基礎体力がもの凄くついた。今でも(現役で)できるのは、あの3年間があるからだと思います」。11月で35歳になるベテラン。その礎を知った高校生たちは頷くばかりだった。

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