「試合で目指すのは練習の平均」の理由 アーチェリー古川高晴が高校生に届けたエール
質疑応答で語った「試合で目指すのは練習の平均」の理由とは
続いては、質疑応答のコーナーへ。「技術」「メンタル」「将来」と3つのテーマについて高校生たちが直接、古川に質問をぶつけた。
技術面では、道具の扱いやメンテナンス、そしてコンディショニングについての質問が続く。「アーチェリーは弓を使って矢を飛ばすスポーツ。道具の管理はすごく大切」と古川。「道具は正しく使わないとフォームがおかしくなってしまう」「弓の羽根の張り方はとても重要。羽根がちょっとでも曲がったらすぐ替えます」など、まずは道具へのこだわりと重要性を説いた。
そして、古川自身、「一番好き」というメンタルの質問へ。
「試合で緊張してしまい、力んで、弓が引きにくくなります。悪い緊張をいい緊張にする方法は?」という最初の質問に、「一度、緊張してしまったら、ほどくことができません。」とズバリ。
「試合にたくさん出れば、だんだん緊張もしなくなってきます。また、深呼吸をするとか、前日からきちんと準備するなど、緊張しないための対策をたくさんしましょう。
でも、僕は一つだけほぐす方法を知っています。『自分よりも緊張している人を探せ!』です。
これは僕の経験ですが、2007年北京五輪のリハーサル大会、1対1の勝負の場面で緊張し足が震えてしまった。『足が震える、どうしよう』と思い、フッと対戦相手をみたら、僕より足が震えていたんです。それを見て、『(緊張しているのは)自分だけじゃないんだ』と思い、すごく楽になった。ぜひ、自分より緊張している選手を探してみてください」
大事なのは不安だけで頭をいっぱいにしないこと、と古川。
「誰かを探してみよう、という気持ちを持つと、試合だけ、不安だけで頭がいっぱい! という状態になりません。ちょっとすき間をあけておくと、気持ちに余裕が出てきて、緊張も少なくなる。ぜひ試してみてください」
「大会で点数が悪いと落ち込んでしまい、どんどん点数が下がってしまう」という悩みに対しては「毎回、自分のベスト、自己新記録を目指していない?」と問いかけた。
「常に自己ベストを目指すと、常に最高の状態でないといけない。すると、ほとんどがマイナスの出来となり『ダメだダメだ』と落ち込んでしまいます。試合で目指すのは、普段の練習でのアベレージです。アベレージ以上の点数が出れば『ラッキー!』『調子がいいのかな』とポジティブに捉えられます。
自己ベストというのは、そうそう出るものではありません。僕も10年以上、練習では自己ベストを更新していません。試合では2年前に更新していますが、狙って出すものではなく出ちゃうものだと思います」
スランプからの脱却方法については、「心のリセットボタンを押してください」とアドバイス。
「調子がよいときと比べてしまうと、調子が悪いなりによい点数が出てもあまり喜べません。最近、全然ダメだ、と思ったらリセットボタンを押して、その日から新たにやり直す。そして、少しでもよかったときは、ヨシ! としっかり喜ぶことが大切です。
また、皆さん調子が悪いときは『どうしてダメなんだろう』と考えるけれど、調子がいいときは、あまり理由を考えないですよね。でも、調子がよいときこそ、なぜ、うまくいっているのかを考える。それを悪いときに再現すると、すぐに調子を戻せます。ぜひやってみてください」