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五輪ボイコットを経験した父の言葉 フェンシング千田健太が高校生に伝えたエール

五輪ボイコットを経験した父の言葉、「人生の経験には無駄がない」の真意

 授業の最後は、千田さんから高校生に向けての「明日へのエール」。高校フェンシング部にとって、最も大きな目標、インターハイが中止になったことに触れ、メッセージを送った。

「今年は新型コロナウイルスの影響で、いろいろな大会が中止になりました。ただ、そういった苦しい経験やきつい思い出も、無駄にはならないと思います。

 これは、私の父からの受け売りですが、『人生の経験には無駄がない』と思います。皆さんは、(日本が)オリンピック出場をボイコットしたことがあるのを知っていますか?」

 この問いかけに、真剣な面持ちでモニターを見る高校生たちは、一斉にうなずいた。千田さんが触れたのは、冷戦下においてソ連(当時)で開催された、1980年モスクワオリンピック。この大会、日本を含む多くの国が、政治的な理由で出場をボイコットすることとなったが、当時、フェンシング日本代表だった千田さんの父・健一さんも、出場断念を余儀なくされた一人だった。

「日本選手団の一人だった父の当時のコメントを見ると、『奈落の底につき落とされた』というようなことが書いてありました。その父は今、何と言っていると思いますか? 

 ……『ボイコットもいいもんだぞ』と言っています。

 きつい経験も、長い年月が経てば、自分の誇れるものに変わっていきます。やはり経験をどうとらえるかが大事で、次の人生に向けて、いいバネに変えていく。そういった気持ちを持つことは、自分を大きく成長させると思います」

 締めくくりは、オンライン授業恒例の写真撮影。剣を持ったイメージで、全員が凛々しく「アタック」のポーズを決めた。

「ここでフェンシングを引退したくないと思うのであれば、私の願いとしては、フェンシングを続けていってほしい。これからの皆さんの活躍を応援しています!」

 インターハイは中止になったが、これが最後ではない、と千田さん。最後は清々しく強い言葉で、未来ある若き剣士たちを鼓舞し、60分間の授業を終えた。

■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。授業は「インハイ.tv」で配信され、誰でも視聴できる。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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