高校生よ「1人で悩まないで」 “不安明かす大切さ”知るケイリン脇本雄太のエール
進路などの不安を打ち明ける大切さ「1人で悩まない事が一番」
1つ1つの質問に親身に答える中で、最も印象的だったのは、悩みを抱える生徒に対して投げかける「1人で悩まないで」という言葉だった。
周りの同級生が続々と進路を明確にしている中、「自分だけ決まらない。すごくどうしようかなという状態です」と不安を打ち明けた3年生の生徒に対しては「解決策というのは人それぞれだから、何とも言えないところはある」と前置きしつつ、自身の経験も踏まえて語り掛けた。
「例えば僕なら、お金の余裕が全くなかったから、お金を稼ぎながら自転車競技をやりたいという意志があった。どうしても進路が決まらない、例えばこういう会社に就いて頑張りたいという意志もないのであれば、一度大学に行って、自分を高めながら進路を探すのも手だと思います。
自分の中の進路を作ってもらうのに、両親や学校の先生に相談する。それもすごくいいこと。1人で悩まないのが一番いいことだと思います」
周りの人に、悩みを打ち明けること。脇本はその大切さを高校入学早々に感じていた。
自転車競技部に入部する際、気がかりとなっていたのが「両親の理解を得られるか」だった。ロードバイク代にかかる費用などは決して安いとは言えない。「いきなり自転車部に入って、新しい自転車がどれくらい(費用が)かかるというのを説明した時に、僕自身が説明してもなかなか納得してもらえなかった」と振り返る。
そこで、自転車部の顧問を務めていた先生に、部活動について説明してもらうことを依頼。情熱を持った先生からの説明が両親の不安を取り除き、入部OKを得ることができた。
「『僕の方でもしっかり支援できるように頑張りますので』と説明してもらって、両親の了承を得て部活を続けることができた。自分で悩まず、周りに相談するというのが一番大きいと思う。僕は先生の熱意がなければ部活動を辞めています」
目を輝かせて質問をする生徒と真っすぐに向かい合った1時間は、あっという間に過ぎた。最後に、参加者を代表して1人の生徒から感謝を伝えられた。「コロナの関係で選手や関係者一同、目標を見失いそうになる時もあるんですけど、これをプラスにとらえて、自分を見つめなおして、今日いただいた貴重な言葉を力に変えて、目標を達成できるように頑張っていきたいです」。脇本の言葉に、勇気をもらった様子だった。
脇本も「明日へのエール」として高校生にメッセージを贈った。
「今回コロナの影響でインターハイが中止になったんですけども、代替で京都で大会をやることが決まっている。参加する生徒さんもいるんじゃないかと思いますが、中止と発表されても諦めてはいけないです。もちろんコロナの影響で気持ちが落ちてしまうのはあるんですけど、僕たち大人たちがいかにして無駄にしないように、どうにかして開催していくという努力をしているので、それを楽しみにしている両親だったり、自転車競技を楽しく観ているファンの人ももちろんいるので、目標を見失わずに頑張ってほしいなと思います」
1963年から毎年行われていた全国高校総合体育大会(インターハイ)は、史上初めての中止が決まっている。それでも、別の舞台が用意された。脇本とかわした言葉を胸に、高校生たちは目標へ歩み続ける。
■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。授業は「インハイ.tv」で配信され、誰でも視聴できる。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)