「なぜ頑張った自分を信じないの」 バドミントン・小椋久美子が高校生に伝えたエール
元バドミントン女子ダブルス日本代表の小椋久美子さんが10日、「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する「オンラインエール授業」に登場。インターハイが中止となった全国のバドミントン部員ら約30人に向けて授業を行った。潮田玲子さんとの「オグシオペア」で競技人気に火をつけた元オリンピアンは、どんな時も自分を信じる大切さを伝え、高校生と言葉のラリーを展開した。
「オンラインエール授業」でバドミントン部員30人に“夢授業”
元バドミントン女子ダブルス日本代表の小椋久美子さんが10日、「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する「オンラインエール授業」に登場。インターハイが中止となった全国のバドミントン部員ら約30人に向けて授業を行った。潮田玲子さんとの「オグシオペア」で競技人気に火をつけた元オリンピアンは、どんな時も自分を信じる大切さを伝え、高校生と言葉のラリーを展開した。
【注目】「大人の私も受けたい」とネット話題 誰でも観られる「オンラインエール授業」はこちらから(過去のアーカイブ動画も視聴可能)
小椋さんが登場した「オンラインエール授業」はインターハイ実施30競技の部活に励む高校生をトップ選手らが激励し、「いまとこれから」を話し合おうという企画。ボクシングの村田諒太、バドミントンの福島由紀と廣田彩花、バレーボールの大山加奈さん、サッカーの仲川輝人、長谷川唯、テニスの杉山愛さんら、現役、OBのアスリートが各部活の生徒たちを対象に講師を務めてきた。
第15回の“夢授業”に登壇した元オリンピアン。最初は小椋さんのサーブから始まった。
「みなさん、初めまして。小椋久美子です。今、コロナで大変な時期ですけど、練習はできてますか? できている人は『〇』をしてください」
パソコン画面に映る多くの参加者たちが腕で丸を作った。一方で手が動かない子たちもいる。「できていない子もいるんだね。せっかくなので一人の方とお話をしたいと思います」。春先のコロナ禍や今の練習状況について一人の部員に質問し、まずは生徒たちが置かれた現状を把握しようと試みる。少し緊張した面持ちの女子生徒。ぎこちないやり取りながら、近況に優しく耳を傾けた。
「インターハイが中止になるような状況を考えると、皆さんの『高校生活でこれだけ頑張ってきたのに』という思いも凄くあるだろうなと思います。私自身も自分が高校でインターハイを目指していたので気持ちはわかります。そんな皆さんと今日は前向きな話をざっくばらんにしたいなと思っていますので、限られた時間でも楽しい時間にしたいと思います」
小椋さんはどんな高校生だったのか。まずは弱音を吐いた経験から明かした。「とにかく毎日練習があったけど、凄い厳しかった高校時代。もう逃げ出したい、やめたいなと思ったことはいっぱいありました」。中学卒業後、地元・三重から大阪の四天王寺高へ進学。「高校で県外に行って厳しい環境で練習できていなかったら、たぶんこんなに結果が出ている強い選手にはなっていなかった」と思い返した。
中学までの最高成績は全国大会3位。自分より実力が上だと認める選手が2人いたため、3位という成績も「有言実行できた」と満足していた。しかし、この実力の“線引き”が高校進学後に自身を苦しめた。「毎日の練習が本当に厳しかったんですけど、何より高校で一番きつかったのは優勝しか意味がないような強豪校ということ」。15歳で親元を離れることを決心し、全国トップを狙う厳しい環境に飛び込んだ。ここで最初の「挫折」が待っていた。
「優勝することばかり言われていました。準優勝以下だともの凄く怒られるし、さらに練習が厳しくなるし、なんか自分の心が追いつかなかったんですね。ずっと3位を目指している人間が、優勝に目標を切り替えるのは本当に難しい。だから、自分の気持ちが追いつかないことが苦しくて、つらくて。先生にも『お前は才能があるのに』って言われていたけど、『才能があるのに』と言われるたびに『努力をしていない』と言われているようにずっと聞こえていたんですね」
転機は実家に帰省した時だった。もともと弱音を吐くタイプではなかったが、父親との何気ない会話の中で初めて本音を漏らした。「なんかもうやめたいなぁ」。意を決して飛び込んだ環境。ポロっと出た弱音にどんな反応をされたのか。意外な言葉が返ってきた。
「もうやめていいよ。帰っておいで」
娘の苦しい胸の内に気づいていたのか、優しく受け止めてくれた。
「もうその言葉で『自分には帰る場所があるんだ』と思えました。だったら、苦しくてもとにかく最後まで倒れるって思うくらいまで頑張ってみようと。それで無理だったらやめようって。その言葉で、進む道と帰る道があると知って本当に救われた。そこから厳しい練習もずっと耐え続けて頑張ったおかげで、自然と自分の口から『全国大会で優勝したいです』と言うようになったんです」