錦織、右手首の腱損傷はキャリアにどう影響? 専門家が語る負傷の原因と復活への道
ひねる衝撃の勤続疲労だけでなく、脇腹や臀部などの故障で手首への負担が増加
錦織は、全身のバネようにひねりながらショットを繰り出す。強烈なスピンを加える動きで手首に負担がかかり、長年にわたって勤続疲労していたと見られるが、他の箇所の痛みをかばうあまり、悪化した可能性もあるという。
「錦織選手は、3月のマイアミ・オープンでも手首を故障していました。テニスの世界では、TFCC(三角線維軟骨複合体)と呼ばれる部位を痛めるケースも少なくありません。TFCCとは、手首の小指側の関節を、靱帯や軟骨などが複雑に絡み合い、つないでいる部分。手首の支持性を高め、力を伝達し、分散させたり、吸収させる様々な機能があります。この部分を痛めたら、手首の支持性が低下する。つまり、グラグラするようなイメージです。TFCCを痛めている影響で、その周囲にある尺側手根伸筋の負荷が高まったことも考えられます」
錦織はマイアミ・オープンで右手首を痛め、続くバルセロナ・オープンを欠場。復帰した5月のマドリード・オープンでも痛みが再発し、準々決勝のノバク・ジョコビッチ(セルビア)戦を棄権している。手首でも別箇所を痛めていた影響が今回の負傷の一因になった可能性が高い。さらに、今季の錦織は臀部や足首を痛めるなど満身創痍の状態だったが、これもまた手首に大きな負担を与えるリスクがあるという。
「屈強な海外選手と戦うために、錦織選手は体全体をひねることでボールにパワーを伝達しています。過去に脇腹や臀部などを負傷していますが、他の痛みの影響でひねる力が弱まっていたとしたら、それを補うために手首を通常よりもひねり、負担が高まったことも考えられます」