サニブラウンのつまずきはなぜ起きた? 専門家が指摘する海外コーチの「積極修正」
リスクを恐れない海外コーチの積極修正「大舞台でいきなりは難しかった」
伊藤氏とともに「0.01」でJリーガー、プロ野球選手など現役アスリートのスプリント指導を手掛ける200メートル障害日本最高記録保持者の秋本真吾氏は「本当に残念です」と結果を振り返り、ミスが起こった背景として「コーチの存在」について言及した。
「海外のコーチ独特の“リスクを恐れない”という積極的な修正だったのかと思います。予選の走りも良かったですが、強いて言えば、リアクションタイムが速くなかった。それでも、余裕でパスできたので、もう一つ手を加えるとするなら、スタートになったのかなという印象です」
現在、サニブラウンはオランダのレナ・レイダーコーチに師事。積極的に走りに修正を加えたことが、若き日本人にとって厳しい結果を招いてしまった。
「これまでやっていなかったことを準決勝でできず、ハマらなかった。彼もまだ18歳。インタビューも今までにないくらい動揺していたし、膝を突いて頭を抱える姿なんて、これまで見たことがなかった。チャレンジが成功していたら、一つ上のステージに行けていたと思いますが、大舞台でいきなりの形は難しいものだったと思います」
真の世界のトップ選手を目指す上では、ミスも帳消しにする「強さ」が求められる。
「世界の本当に強い選手なら、ああいうことが起こっても10秒0から10秒1くらいにまとめて走ってしまう。為末大さんは『世界ではみんな死んだフリをしている』と言っていましたが、ここぞの場面で力を発揮してくる。そういうところに速さだけでなく、強さが問われる。サニブラウン選手自身もいい経験になったと思います」
果たして、不本意な結果となったことが今後に影響を及ぼすことはあるのか。
「チームスポーツでは、競技によっては試合数が多く、また試合の中で挽回するチャンスがあったり、周りの選手がフォローしてくれたりすることで引きずらないこともできますが、陸上選手というのは心に負うダメージは大きく、引きずってしまいやすい。例えば、世界選手権なら2年後、五輪なら4年後までミスを取り返すチャンスは回ってこなくなります」