敗退なでしこ、涙を美談で終わらせるな 永里亜紗乃「本当にW杯に全て懸けていたか」
結果責任は負うのは監督「指導者の仕事にも目を向けていく必要ある」
勝つチャンスは十分ある相手と内容だっただけに、ベスト16敗退という結果はとても残念です。これが今の日本女子代表の実力と認めざるを得ません。世界一を勝ち取った8年前、惜しくも準優勝で涙をのんだ4年前とは大きく立ち位置が異なり、結果だけを切り取っても危機感は募るばかりです。
【注目】育成、その先へ 少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信する野球育成解決サイト『First-Pitch』はこちらから
例えば、常に日本の課題として指摘されてきたフィジカルや身体能力ですが、改善するための手は打てているのでしょうか。私は大会期間中、イングランドのトレーニングを取材する機会がありました。主に非公開練習のため目で確認できたのは冒頭15分のウォーミングアップのみでしたが、彼女たちは最初のアジリティトレーニングからフルスピードでした。次に重りをつけた状態でスプリントを行い、最後は重りを外した状態で約30メートルを全力疾走し、フィジカルトレーニング並みの負荷をかけていたのです。
日本の場合、ゆっくりとしたランニングやストレッチで体をほぐすことが多いはず。集団で行う和気あいあいとしたウォーミングアップが一概に悪いとは言えませんが、こんなところにも明確な違いが見えたのです。スプリントの質・量の差はそのまま日常になる。もともと体格に恵まれている選手たちとこれだけトレーニングに差があれば、その差が縮まるはずはありません。
日本人だからフィジカルが劣っていても仕方ない、という表現で片付けてはいけません。海外にも体の小さい選手、足の遅い選手はいます。でも国の代表に選ばれる選手たちは必ず努力し、トレーニングで改善を図っているのです。日本も最初から諦めてはいけないですし、起きている事象を課題として捉えて改善策を練るべきではないでしょうか。それができなければ世界との差は開く一方です。
そしてベスト16敗退という結果をしっかり精査しなければなりません。代表チームなので結果はシビアに受け止めなければいけませんし、結果責任は監督が負うものです。内容をしっかり分析して現場へフィードバックすること、そして女子サッカーのレベルを上げるために指導者の仕事ぶりにも目を向けていく必要があります。男子サッカーと比較した時に女子サッカーはさまざまなことが議論されず、うやむやになっているのが実状の気がします。