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「泣きながら練習する選手も」 五輪選考、フィギュア強国日本ならではの重圧 鈴木明子「精神的に張り詰めた状態が…」

スポーツ界を代表する元アスリートらを「スペシャリスト」とし、競技の第一線を知るからこその独自の視点でスポーツにまつわるさまざまなテーマで語る「THE ANSWER」の連載「THE ANSWER スペシャリスト論」。元フィギュアスケート五輪代表の鈴木明子さんが「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務め、競技に関する話題はもちろん、現役時代に摂食障害を患った経験から、アスリートの健康問題なども語る。

2013年の全日本選手権で優勝した鈴木さん。競争の激しい日本ならではの難しい戦いを経験した【写真:本人提供】
2013年の全日本選手権で優勝した鈴木さん。競争の激しい日本ならではの難しい戦いを経験した【写真:本人提供】

「THE ANSWER スペシャリスト論」フィギュアスケート・鈴木明子

 スポーツ界を代表する元アスリートらを「スペシャリスト」とし、競技の第一線を知るからこその独自の視点でスポーツにまつわるさまざまなテーマで語る「THE ANSWER」の連載「THE ANSWER スペシャリスト論」。元フィギュアスケート五輪代表の鈴木明子さんが「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務め、競技に関する話題はもちろん、現役時代に摂食障害を患った経験から、アスリートの健康問題なども語る。

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 今回のテーマは「大事な試合に向けたピーキング」。来年2月に行われるミラノ・コルティナ五輪に向けた代表選手選考対象大会である全日本選手権が、19日から開催される。4年に一度の五輪出場のため、選手たちはどのような準備を経て大会に臨むのか。元競技者の視点から、日本のフィギュアスケーターが抱える難しさや、注目してほしいポイントを語る。(構成=長島 恭子)

 ◇ ◇ ◇

 12月19日から、いよいよフィギュアスケートの全日本選手権が始まります。今年の全日本選手権は、五輪前最後の代表選手選考対象大会です。大会の結果を受け、来年2月に開催されるミラノ・コルティナ冬季五輪の出場選手がすべて決まります。

 五輪代表に選ばれる選手が1、2名に限られる国もあるなか、日本のフィギュアスケート界は男女とも世界でもトップクラスの実力者揃い。それこそソルトレークシティ五輪(2002年)の頃から、“シングルの代表枠が足りない”と言われる状況が続き、毎回、熾烈な争いが繰り広げられています。

 今回でいえば、10月からスタートしたグランプリ(GP)シリーズ(世界各地で開催される6大会で構成する世界大会)の1試合1試合からが勝負です。GPシリーズの結果如何で、代表選考対象大会のグランプリ(GP)ファイナルに進出できるかどうかが決まりますし、さらにファイナルで表彰台に乗れるかどうか、そして年内最後の全日本の順位によって、五輪に行けるかどうかが決まるからです。

 また、「この人しかいない」という国の代表選手の場合、五輪シーズンに入ると本番に向けてピークを合わせることに集中できます。ところが、代表クラスがひしめく日本では、代表権をかけた試合が続き、シーズン当初から一戦も落とせない。そのため、選手たちは五輪本番まで、精神的に張り詰めた状態が続くのです。

 特に先日行われたGPファイナルに出場した選手たちは、わずか2週間後に全日本選手権を迎えることになります。ここで問われるのが「ピーキング」、つまり心身のコンディションをいかに調整し、最高の状態に持っていけるかどうかです。

 選手たちは一度、GPファイナルの疲労をしっかり抜き、それからもう一度、最高の状態に仕上げていきます。その際、ものすごく大事になってくるのが、落ち着いて、やるべきことに集中できるかどうかです。もちろん、実際は“落ち着いて”なんていられない心境ではありますが、それでもやるべきことを着実に積み重ねていくことがとても大事です。

 特に直前の大会で結果が振るわなかったり、予定どおり調子が上がらなかったりすると、選手の心には焦りが生まれます。そこで「もう少し練習しなきゃダメだ」と必要以上に追い込むと、疲れが抜けず、ケガにつながったり、体調を崩したりします。そうなれば、今度はメンタル的にも追い込まれてしまう。来る本番に向けて練習が甘くなっても、追い込みすぎてもいけないという、本当に難しい時期なのです。

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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