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箱根の勝負を分ける“心の整え方” ある選手はレース前日に「走れない」と嘆いた

レース前日に「走れない」と訴えた選手、その理由とは…

 忘れられないのが、ある選手のエピソードです。彼は初優勝の年に区間新記録を打ち出しました。この時の彼はメンタルコンディションが非常によく、笑顔で、楽しそうな様子だったことが印象に残っています。

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 翌年、彼はケガに苦しみながらも復帰。ところが、レースの前日、「膝が痛い」と訴えます。ちなみに彼はそれまで、一度も膝の痛みを訴えたことはありません。「どのぐらい痛いの?」と聞くと、「この痛みが明日出たら走れないほどです」という。しかし触ってみても原因は見当たりません。

 それでも、私たちはレース直前まで体をケアし、当日、「大丈夫だよ」と声を掛けて送り出しました。

 果たして、彼はその後、どうなったか? 前年のタイムは下回ったものの、区間首位を守り、チームは往路優勝を果たします。痛かったはずの脚にも異常ありません。もちろん、ゴール後は、興奮状態で痛みを感じないこともあります。しかし、1週間後も不具合も異常も現れませんでした。

 これこそ、心が引き起こした体の不調です。ケガからの復帰で臨むというタイミング、前年度と同様の良い走りをしなければいけない、結果を残さなければいけないというプレッシャーによるストレスが「痛み」という症状を招いたのです。

 極限状態に置かれると、こういったことは日常茶飯事。皆さんも、経験がありませんか? 大事なプレゼンや試験の当日、急に腹痛や頭痛が起きたり、発熱したり。これらも、脳が強いストレスにさらされたことによる体調不良の一つです。よく試合で力が発揮できないと世間では「練習方法が間違っていた」「体やフォームを変えたのが悪かったのだ」という論調になりがちですが、実は体の内部では色々なことが起こっているのです。

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中野ジェームズ修一

スポーツトレーナー

1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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