箱根の勝負を分ける“心の整え方” ある選手はレース前日に「走れない」と嘆いた
レース前日に「走れない」と訴えた選手、その理由とは…
忘れられないのが、ある選手のエピソードです。彼は初優勝の年に区間新記録を打ち出しました。この時の彼はメンタルコンディションが非常によく、笑顔で、楽しそうな様子だったことが印象に残っています。
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翌年、彼はケガに苦しみながらも復帰。ところが、レースの前日、「膝が痛い」と訴えます。ちなみに彼はそれまで、一度も膝の痛みを訴えたことはありません。「どのぐらい痛いの?」と聞くと、「この痛みが明日出たら走れないほどです」という。しかし触ってみても原因は見当たりません。
それでも、私たちはレース直前まで体をケアし、当日、「大丈夫だよ」と声を掛けて送り出しました。
果たして、彼はその後、どうなったか? 前年のタイムは下回ったものの、区間首位を守り、チームは往路優勝を果たします。痛かったはずの脚にも異常ありません。もちろん、ゴール後は、興奮状態で痛みを感じないこともあります。しかし、1週間後も不具合も異常も現れませんでした。
これこそ、心が引き起こした体の不調です。ケガからの復帰で臨むというタイミング、前年度と同様の良い走りをしなければいけない、結果を残さなければいけないというプレッシャーによるストレスが「痛み」という症状を招いたのです。
極限状態に置かれると、こういったことは日常茶飯事。皆さんも、経験がありませんか? 大事なプレゼンや試験の当日、急に腹痛や頭痛が起きたり、発熱したり。これらも、脳が強いストレスにさらされたことによる体調不良の一つです。よく試合で力が発揮できないと世間では「練習方法が間違っていた」「体やフォームを変えたのが悪かったのだ」という論調になりがちですが、実は体の内部では色々なことが起こっているのです。