なぜ村上茉愛は銀メダルを掴めたのか “日本の弱点”で誇る「Dスコア」という武器
“日本の弱点”ゆかで世界と渡り合える「Dスコア」を持つ強さ
バイルズ、モーガンを残し、ラストで得意のゆかに臨んだ村上。「普段の演技ができれば、確実にメダルに手が届くという気持ちで見守っていた」と岡部さん。演技終了後、14.000の得点を叩き出した瞬間、銅メダル以上が確定。続くハードの結果を待って銀メダルが決まった。
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「もちろん、すべての選手が 『絶対にミスをしない』という強い気持ちで演技に臨んでいます。しかし、昨年の世界選手権で“0.1の差”に涙をのんだ経験をした村上選手は、“着地が1歩動くだけの減点(-0.100)”の重みを知っている。0.1ポイントも落とさないぞという誰よりも強い想いを感じました」
この日は、史上最強と謳われるバイルズも、跳馬でのしりもち、平均台での落下やふらつきをはじめ、大小のミスが目立った。
「団体予選から数えて大会は1週間目。その間、選手たちは常に気持ちが張っている状態です。その上、バイルズ選手は、腎臓結石を抱えているなかでの試合。蓄積する緊張と疲労に体調の悪さが重なり、ミスにつながったのかもしれません。しかし、ミスをしても金メダルを獲れるだけのDスコアがあり、なおかつEスコアも高い。圧巻の強さです」
世界体操で女子個人総合のメダルを獲得した日本人は、村上で3人目(1966年大会銅の池田敬子、2009年大会銅の鶴見虹子)。村上が「銅メダルの壁」を越えられたのは、世界のトップ選手と渡り合えるDスコア(演技価値点)を持っている点が大きい。
「日本は過去、ゆかと跳馬に弱いと言われ、平均台は演技の質は良いがDスコアでの得点が稼げず、上位に食い込めなかった。でも、村上選手の代名詞となるシリバスは、最強と言われるバイルズ選手や、ハード選手も組み込んでくる技です。難易度の高いDスコアを持ち、なおかつ大きな失敗をしない質のいい演技ができるからこそ、世界2位を掴めました」
村上がもたらした初の銀メダル。今後の日本の女子体操界に与える影響とは。
「日本の女子体操は、世界で勝てる基準となる選手がなかなか出てこなかった。今回の結果をもって後に続く選手たちは、世界のトップになるためには村上選手のレベルを目指し、超えることが必要だとわかった。日本のミスの少ない演技は高く評価されているので、いいところは残しつつ、東京オリンピック、そしてその先に向かってどうレベルアップし、チャレンジしていくのか。やるべきことは山積みですが、女子体操の発展、未来につながっていくと思います」
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)