W杯ラグビー日本に現れた「Xファクター的存在」 エディー・ジョーンズが見た「福岡堅樹の役割を担う選手」
残り10分の戦い方は次戦イングランド戦へ「大きな弾みとなったはず」
2つ目のポイントは、残り時間10分で見せた戦い方です。あの10分間は試合の中でも一番いい10分でした。
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この日のトゥールーズは気温32度と非常に暑く、ラグビーをするには決していい環境とは言えなかった。湿気もかなり高いので汗でボールが滑りやすく、速い展開が作りにくい状況でしたが、日本はフィジカル的にもきつくなる最後の10分で、長所でもある展開の速いラグビーを仕掛けることができました。
おそらく次のイングランド戦はキックやハイパントの多い試合展開となるでしょう。今回よりも苦戦が強いられることを考えても、最後の10分で見せた速い展開のプレーは、イングランドを相手にどうやってゲームを組み立てていくかを考えるヒントになったのではないかと思います。
フランスでは2007年にもW杯が開催されましたが、今回は当時よりも明らかに気温と湿度が上がり、ラグビーをするには厳しい条件となっています。
日本はさらに厳しい猛暑の中でトレーニングを積み重ねてきた強みがありますが、それでも厳しさを感じているでしょう。一方、チリやアルゼンチンなど南半球の国は今、季節は冬。気象条件も考慮しながら準備をしたものの順応しきれず、選手たちは前半から疲弊し、あまり走れていなかったように思います。
タフな環境の中で、いかに自分たちのラグビーをプレーすることができるか。フィットネス量を落とすことなく、畳みかけるような攻撃を仕掛けられた最後の10分間は、重要な一戦となるイングランド戦に向けて大きな弾みとなったはず。どんな試合を見せてくれるのか、楽しみです。
■エディー・ジョーンズ / THE ANSWERスペシャリスト、ラグビー豪州代表HC
1960年1月30日生まれ。豪州出身。現役時代はフッカーを務め、ニューサウスウェールズ州代表。92年引退。教職を経て、96年に東海大コーチになり、指導者の道へ。スーパーラグビーのブランビーズなどを経て、01年豪州代表HC就任。03年W杯準優勝。イングランドのサラセンズ、日本のサントリーなどを経て、12年日本代表HC就任。15年W杯は「ブライトンの奇跡」と呼ばれる南アフリカ戦勝利を達成した。同年、イングランド代表HCに就任し、19年W杯は自身2度目の準優勝。今大会は豪州代表HCとして出場している。近著に「プレッシャーの力」(ワニブックス)。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)