職場を懸けた女子ゴルフのシード争い 佳境の今、当落線上の選手がすべき「開き直り」
パターイップスに悩んだ北田、シード選手に復帰できた理由
05年の終盤5試合、北田は10月の富士通レディースから4試合連続で予選落ちだったが、自身の最終戦となった大王製紙レディースは16位に入った。賞金ランクは60位。シード落ちはしたものの、最終QTは上位で突破し、翌06年の出場権を確保した(当時、リランキング制度はなし)。
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「今、振り返ると、自分の中で開き直ったことが大きかったですね。パターイップスの状態は続いていましたが、やることはやってきたので、『どこに飛んで行くかはボールに聞いてくれ』『これでダメなら、ゴルフを辞めればいい』とさえ思って会場に入りました。なので、焦る気持ちが消えて結果もついてきました。私は神様が『まだ、ゴルフを続けなさい』と言っていると思い、そのオフも懸命に練習しました」
だが、シード落ちをし、QTも下位に沈む選手は例年出てくる。今季は30代以上の奮闘も目立つが、出場権を逃したことをきっかけに、ベテランがツアーから離れていく現実もある。
「長くプロの第一線で頑張ってきたベテランは、いろんな経験をしています。なので、この時期になっても意外と焦ってなく、QTでも結果を出せたりもします。ダメなら仕方ないことですし、そこからゴルフとの新しい向き合い方もできます。試合を重ねて蓄積された心身の疲労をリフレッシュし、プライベートな時間を充実させることも、長い人生では大切なことですから」
今、北田は子育てをしながら、解説、リポーター、レッスンなどでゴルフに携わっている。ルーキーの頃から「お手本」にしてきた元賞金女王の不動裕理とは、食事をする関係にもなったという。
「地味な練習をコツコツ続ける姿を見ては、『トップにいる人がこんなにも』と思っていました。試合になると、不動さんはぶつぶつと独り言を口にしていましたが、私は話しかける勇気もありませんでした。ですが、時を経て食事をしながら、初めて『ラウンド中、何を話しているんですか』と聞いてみると、不動さんは『ボールとクラブと会話をしている』と答えてくれました。
それだけ、プレーに集中できているということです。今の選手にとっても、学ぶべきところの多い先輩。私もあらためてそのすごさを知りましたし、話せるようになって良かったなと思います」
(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)