日本を手こずらせた韓国右腕のシンカー 「右打者のカウント球」にも使った癖球を分析
シンカーは関節の可動域が影響することの認識を
シンカーで個人的に思い出深い投手の一人が吉永健太朗さん(元JR東日本)です。
【注目】育成、その先へ 少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信する野球育成解決サイト『First-Pitch』はこちらから
私が早実時代に日大三のエースだった彼と西東京大会決勝で投げ合い、その後、日大三は甲子園優勝。早大でチームメートとなり、一緒にプレーしました。彼はオーバーハンドからまさに左投手のカーブのようなシンカーを投げる。逆曲がりして、右投手としてはあり得ない軌道でした。
ただ、シンカーを投げる上では気をつけなければいけないことがあります。
ダルビッシュ投手とお話をさせてもらったこともありますが、高校生特有の関節の柔らかさが影響する可能性があり、体ができ上がって筋力がついてくると、同じように投げられないことが考えられます。ダルビッシュ投手も今は高校時代のようなシンカーは投げていない印象です。
もし中高生に伝えるなら、今は投げられても「将来、投げられなくなるかもしれない球」という認識は持っておいた方がいいと思います。
肩肘の負担も決して小さい球ではなく、関節の可動域も人それぞれ異なるもの。無理に投げようとすると、痛めてしまう可能性があります。オーバーハンドでトップスピン系のシンカーを投げるには、そういった体の作りや指先の感覚が影響していると思います。
一方で、体がある程度でき上がっていて、サイドやアンダースローの投手なら、オーバーハンドより圧倒的に投げやすい球種でもあります。もとからサイドスピンをかかりやすい腕の振りなので、そこからトップスピンを少し加えることで作りやすさが生まれます。
日本で武器にする投手は多くありませんが、国際舞台だからこそ見ることができた特徴的なシンカーでした。
■内田聖人 / Kiyohito Uchida
1994年生まれ。早実高(東京)2年夏に甲子園出場。早大1年春に大学日本一を経験し、在学中は最速150キロを記録した。社会人野球のJX-ENOEOSは2年で勇退。1年間の社業を経て、翌19年に米国でトライアウトを受験し、独立リーグのニュージャージー・ジャッカルズと契約。チーム事情もあり、1か月で退団となったが、渡米中はダルビッシュ有投手とも交流。同年限りで指導者に転身。昨年、立ち上げたオンラインサロン「NEOREBASE」は総勢400人超が加入、千賀滉大投手らプロ野球選手も多い。個別指導のほか、高校・大学と複数契約。自身も今年自己最速を更新する152キロを記録。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)