走る時は「グー」と「パー」どっちが速いのか 五輪100mトップ23選手の手を見てみると…
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。陸上はスプリント指導のプロ集団「0.01 SPRINT PROJECT」を主宰するアテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏と元400メートル障害選手でスプリントコーチの秋本真吾氏が、走りの新たな視点を提案する「走りのミカタ」を届ける。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#49
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。陸上はスプリント指導のプロ集団「0.01 SPRINT PROJECT」を主宰するアテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏と元400メートル障害選手でスプリントコーチの秋本真吾氏が、走りの新たな視点を提案する「走りのミカタ」を届ける。
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第3回は「走る時の手は『グー』と『パー』どっちが速いのか」。小さい頃の50メートル走や運動会で誰もが一度くらいは考えたことがあるだろう素朴な疑問。しかし、今大会のトップスプリンターの手を見てみると、グーだったり、パーだったりする。いったい、どちらが正解なのか。全国でかけっこ教室を行い、同じような質問を多く受けるという2人に見解を語ってもらった。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
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走る時の手は「グー」と「パー」どっちが速いのか。現役時代はともにグーだったという伊藤氏と秋本氏。果たして、その正解はあるのか。
「実は、子供のかけっこ教室でもすごくよく聞かれる質問です。逆に、こちらから『グーが良い人? パーが良い人?』と聞くと、いつも半々くらいになります。ただ、正解はというと『どっちでもいい』です。いろんな人の走り見てごらん、グーの人もパーの人もいろいろいる、手のひらをこうしなければいけないということはないから、という伝え方をしています」(秋本)
たしかに、100メートル世界記録保持者のウサイン・ボルト(ジャマイカ)はグー、日本の桐生祥秀はパーと分かれる。1日に行われた東京五輪の男子100メートル準決勝を走った23人を見てみても、10人がグー、12人がパーだった(ロアン・ブラウニングは左手がパー、右手がグー)。パーがやや優勢なものの、差にはっきりとした有意性はみられない。ちなみに、決勝で9秒80の欧州新記録で金メダルを獲得したラモントマルチェル・ジェイコブズ(イタリア)はグーだった。
では、なぜ「どっちでもいい」のか。
「腕振りは走りに勢いを加える上で重要な役割を果たしますが、手元の形がそれに大きく影響を与えることはありません。大切なことは脚で地面に力を加えるタイミングと腕を振り込んで勢いを与えるタイミングが合っているか、つまり下半身だけでなく上半身が連動し、全身を上手く使えた走りになっているかです。これが前提にある上で個人的に走りやすい方を採用すれば良いということです」(伊藤)
走りの形を整える方が、手の形よりもっと重要。それが陸上界の常識だ。