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日本の大砲・村上宗隆を斬った縦スラ メキシコ前茨城右腕の勝負球は「ザ・ジャイロ」

ピッチングストラテジストの内田聖人氏【写真:荒川祐史】
ピッチングストラテジストの内田聖人氏【写真:荒川祐史】

縦スラを投げる時に大切な意識は「体で投げる」

 では、縦スライダーをどう投げるかという技術についても少しお話しようと思います。

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 前述の山岡投手のようなトップスピン系のスライダーは、ストレートとは大きく異なる腕の捻りが必要で、見よう見まねで投げるにはなかなか難易度が高い印象です。抜けてしまってカーブのようになるか、逆にジャイロ成分が入ってしまって、中途半端な変化になってしまう。

 慣れない人が無理に投げようとすると、腕の振りも全く変わってくるので少しリスキーです。なので、もし中高生が最初にチャレンジするのであれば、ジャイロ系のスライダーの方が良さそうです。

 その場合、意識してほしいのは、当たり前のようですが「体で投げる」という意識を持つこと。

 わりとジャイロ回転をかけること自体は難しくありませんが、進行方向に対して発射の力をしっかりと加えられないと抜けてしまい、あまり変化せず、トップレベルではホームランの打ちやすい球になってしまいます。

 ジャイロ系のスライダーは打者にストレートと一瞬思わせなければいけない球。手先も大切ですが、手先だけで曲げようとするのではなく、ストレートと同じように強い発射を心掛ける。全身を使ってアプローチするというプログラミングを作ることがとても大切です。

 そうすると、より実戦的な球になり、高いレベルで通用する可能性が高くなる。加えて、体ができていない中学生くらいでは手先に意識が向くことで肩肘にかかる負担から、怪我のリスクも減らせると思います。

 もう一つ、このシーンから気づきがあるとすれば、野球を観る際にいろんな視点を持つということ。

 侍ジャパンは普段から身近に感じている凄い打者。例えば、あの村上選手がなんで三振したんだろうと深掘ると、今話したような理由が浮かびます。日本の勝敗ももちろん大切ですが、野球の試合を観て上手くなるなら、自分が当事者になったつもりで考える癖をつけた方がいい。

 日本は決勝トーナメント進出を決め、戦いは佳境に入っていきますが、子供たちが五輪から成長できるヒントはまだまだあるはずです。

■内田聖人 / Kiyohito Uchida

 1994年生まれ。早実高(東京)2年夏に甲子園出場。早大1年春に大学日本一を経験し、在学中は最速150キロを記録した。社会人野球のJX-ENOEOSは2年で勇退。1年間の社業を経て、翌19年に米国でトライアウトを受験し、独立リーグのニュージャージー・ジャッカルズと契約。チーム事情もあり、1か月で退団となったが、渡米中はダルビッシュ有投手とも交流。同年限りで指導者に転身。昨年、立ち上げたオンラインサロン「NEOREBASE」は総勢400人超が加入、千賀滉大投手らプロ野球選手も多い。個別指導のほか、高校・大学と複数契約。自身も今年自己最速を更新する152キロを記録。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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