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陸上女子中長距離に風穴を開けた田中希実 野口みずきが絶賛する「21歳ながら」の凄さ

野口さんは田中の目力に「極めたい気持ち」を感じた【写真:奥井隆史】
野口さんは田中の目力に「極めたい気持ち」を感じた【写真:奥井隆史】

会見から伝わる達観した思考、野口さんが他の選手に学んでほしい姿とは

 会見などの取材対応では、理路整然と自分の言葉で話す姿が印象的だ。昨年12月の日本選手権で東京五輪代表に内定。翌日の会見ではこんな言葉を並べていた。

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「レースまでいろいろ考えて、恐怖と不安と苦しみが長く続いていました。走り終わって勝ったとわかっても、苦しみが長く続きすぎたせいからか、それが終わったということがわからない。むしろ、その苦しみは一緒に走ったどの選手も葛藤していたものですし、勝ってもまた次の戦いがある。次もそういった選手と自分自身の葛藤にいかに向き合っていくかを考えると、まだ手放しで喜べない。今回も自分の弱さと戦いながらのレースになりました」

「だからこそ、次からも責任を持って頑張りたい。またしんどい思いをするかもしれないけど、それは(五輪出場の)権利を得られたからこそ感じられるしんどさ。その中で楽しさや喜びを見いだせるような強さを身につけたい。そこで勝った実感と責任は増していくのかなと思います」

 同世代は就職活動を始めるくらいの年齢で、少し達観した見方をしている。普段、記事などを通じて田中の発言に触れるという野口さんは「頭がいいですよね。羨ましいですよ」と笑う。子どもの頃から読書好きの21歳。「赤毛のアン」などの文学を読み漁った。「メモが不安を忘れさせる」と、今でもレースの合間に大学のオンライン授業を受ける。考えや言葉がまとまっている姿に、野口さんは感心した。

「勉強も怠らずにやっているのだと思います。一つ一つの言葉が丁寧で、しっかりとした言葉が普通に出てきますよね。私が同じような年齢の時は、ストレートなことしか言えなかった(笑)。(レース間の勉強は)メリハリがあるからいいんでしょうね。好きなことで緊張から解放される。結果を出せる人はオンとオフの切り替えができます。メリハリをつけられる人が成功している印象です。

 他の選手に学んでほしいのは、ひたむきさですね。彼女の目力には『極めたい』という純粋な気持ちを感じます。ひたむきに競技を追い求めている姿が凄く魅力的。気持ちが綺麗な感じがしますよね。個性が溢れているのが良いと思います。周りの選手は彼女を見て何かを感じ取ってほしい。何かを感じて自分を振り返る。そこから突き進んでほしいなと思います」

 田中は800、1500、3000、5000、1万メートルと多数の種目で大会に出場してきた。調整のため、勝負勘を養う、スピードを得るなど、その時々によって明確な意図を持っている。スタートから全開で大逃げを打つ時もあれば、終盤に一気にギアチェンジするレースも。見る側を楽しませてくれる走りに対し、野口さんはベタ褒めする。

「選手は、ただ突っ走ればいいというものではありません。メンバーや体調をしっかり理解して、どうレースを動かすべきか。それをしっかりわかっている選手。21歳ながら、ですよ(笑)。それぞれの距離で走りをうまく使い分けています。それが凄く印象的で、オールマイティーにいろいろな種目で走ることができる。走りのセンスが抜群にありますね」

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野口 みずき

THE ANSWERスペシャリスト マラソン五輪金メダリスト

1978年7月3日生まれ。三重・伊勢市出身。中学から陸上を始め、宇治山田商高(三重)卒業後にワコール入社。2年目の98年10月から無所属になるも、99年2月以降はグローバリー、シスメックスに在籍。01年世界選手権1万メートル13位。初マラソンとなった02年名古屋国際女子マラソンで優勝。03年世界選手権で銀メダル、04年アテネ五輪で金メダル獲得。05年ベルリンマラソンでは2時間19分12秒の日本記録で優勝。08年北京五輪は直前に左太ももを痛めて出場辞退。16年4月に現役引退を表明し、同7月に一般男性との結婚を発表。19年1月から岩谷産業陸上競技部アドバイザーを務める。

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