一着50万円超も、洗濯は水洗い 中野友加里が語る「フィギュアスケートと衣装」の秘密
中野さんの一番のお気に入りは母が作ってくれた「シンデレラ」
――どんなやりとりをするのでしょう?
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「一番に伝えるのは曲名です。デザイナーもプロなので、それで世界観は掴んでもらえます。曲名と希望の色、加えて自分の採寸。私は分かりやすいクラシックバレエ音楽や映画音楽を使っていたので、主人公になり切るための衣装。デザイナーさんも衣装のイメージも沸きやすかったのではないかと思います。最初に紹介してもらったのはロシアの方で、自分の希望を伝えると、デザインがいくつかメールで送られてきました。
それを自分で選んで決めたら、実物が発送されてきます。なので、その方とは一度も会わずに衣装を完成させました。一番は曲名からどんなインスピレーションが沸いてくるのか。そういう部分は海外の方が特に優れているなあと感心しました。ただ、一度も会わない分、色がイメージと合わない箇所があったり、サイズが合わなかったりということがあったので、そういう時は母に直してもらいました」
――中野さんは現役時代、様々な衣装を着て大会に出場しましたが、一番のお気に入りはありますか?
「2006-07年に滑った『シンデレラ』のプログラムです。私は色が白く、肌の色に近い素材がなくて、母が生地の一部を白く染め直して、私の肌の色と大差ないくらい完璧に調整してくれたんです。飾りが綺麗に見える立体感が出て、それは周りから素晴らしいと褒めていただけました。自分の肌と一体感を作れた衣装は、自分の中で思い出深いです」
――衣装も一度作って終わりではなく、常により良いものにアップデートしていくのですね。
「その通りです。私は布にはこだわっていました。特に、絹は軽い。重いものをつけて跳ぶと、体重と同じで、そのまま余分な重さになります。そのため、私は昔から『なるべく軽く』と母に伝えていました。キラキラ光るストーンの素材もなるべく軽くと希望しました。あの一つ一つで衣装もどんどん重くなります。一度、真珠をつけたことがあるのですが、すごく重かった。そうなると技術面で影響が出てきます。できるだけ軽量化するようにしていました」
――それだけこだわりが強いと、金額がかかるものが多いのではないかと想像します。
「そうですね。海外の方に頼むと、10万円以上は見込んでおいた方がいいです。デザイン料を含め、すごく細かい作業も必要になります。本当に高いものは50万円以上かかり、お金をかける選手はすごくかけています。でも、それはお金をかけるくらい衣装は重要なものだから。もちろん、安価なものでも作れますが、衣装の出来栄えで選手にとって一つのプラス要素になると思います」
――メンタル面からも演技に与える影響もあるわけですね。
「やはり自分が好きと思えない衣装を着て出たくはないですし、いかに自分の印象を残すか、インパクトを残すかはとても大切です。私の中では2003-04年シーズンに荒川静香さんが『白鳥の湖』で着用した衣装は驚きました。こういう衣装があったのか、と。発想によって、衣装だけで話題になってしまう。そういうところも見所の一つになると思います」