なぜ、箱根駅伝は20kmでも失速するのか 青学大トレーナーが語る「駅伝」という難しさ
一人でも遅れると、後々のダメージに…万全の準備をしても生まれるドラマ
また、駅伝は一人でも選手が遅れると、後々のダメージが大きくなりやすい。監督は各選手のタイムを想定しながら、どの時点で何分差を開けば優勝できるなど、と細かい計算を元に、選手の配置を決めます。ですから選手たちは自分のペースだけを守って走ればいいのではなく、遅れが出たら、後々の選手のためにも巻き返さなくてはいけない。これが駅伝の難しさです。
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例えば1区の選手が想定よりも1、2分遅れて、2区の選手にたすきを渡したとします。どこかで巻き返さないと最終的に順位が下がってしまうため、2区の選手はオーバーペースで走ります。ここでも遅れたら、今度は3区の選手がさらにオーバーペースで突っ込んでいく。選手たちは本来のペース以上の走りをするため潰れる可能性も高く、遅れも累積し、気づいたら大幅に遅れていた、ということが起こります。
ですから駅伝は、最初に想定通りに走れた学校ほど、後々も余裕をもって通過できる。後から抜こうとするほど、きつくなるのです。
駅伝はチームで走るので、最終的に誰のところで何分稼げれば勝てる、という計算がうまくいけば勝てます。この計算が一つでも狂うと苦しい。圧倒的に強い選手が1、2人いるチームは強い、といわれる理由はここです。遅れを修正する力のある選手がいれば、挽回できますが、いないと本当に厳しいのです。
長い距離といろんなシチュエーションのなかで、ペースダウン、ペースアップが繰り返される駅伝は、フィジカル的にみてもとてもタフなレース。ですから万全な準備をしてもアクシデントが起こるし、またドラマも生まれるのです。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)