食費は「目標1日500円」の五輪金メダリスト 女子大生ボクサー入江聖奈の減量のこだわり
1日500円に切り詰める食生活「グミも40グラム138円、必要な分しか」
大学3年生の入江は、入学後2年間は寮生活だったが、3年春から1人暮らし。食事管理も自分ですることになり、難しさに直面した。
五輪金メダリストといえど、基本は仕送り生活。1日500円、1か月1万5000円に抑えることが理想という。鶏肉を焼くなどして自炊で安価にたんぱく質を摂るように意識しているが、疲れもあってスーパーで値札とにらめっこ。総菜に手を出すこともある。「最近は気が緩んでいるのか、1日1000円かかる日があって反省。グミも40グラム138円で必要な分しか買えない」と切り詰め、競技と向き合う。
イベントでは、入江のような学生アスリート向けに安価で栄養バランスが取れた食事をするためのアドバイスがあった。橋本栄養士は「家に何もないと食べないこともある。安い時に買い置きしておくことは大切なポイントです」と言い、具体的な食材を挙げた。
主食はマンナンヒカリ、もち麦、冷凍おにぎりなど。主菜は納豆、半熟たまご、鮭の中骨缶など。副菜は冷凍野菜、スープ缶、ひよこ豆など。牛乳・乳製品・果物ではヨーグルト、カッテージチーズ、冷凍フルーツなど。
1時間にわたったイベントでアスリートに必要な栄養素からコンビニ食材の摂取カロリーなど、さまざまなレクチャーを受けた入江。自身が不足しがちなたんぱく質摂取のため「納豆に冷凍のオクラをプラスするといい」という助言は、目から鱗だったという。
「オクラという手があったか、と思いました。野菜と考えると、トマト、ニンジンとか、ちょっとお高めのものしか思い浮かばなかった。冷凍のオクラだったら、私たちみたいな大学生でスポーツをやっている子でも手が出せる。具体的で、リアルなアドバイスをいただいたのが凄く良かったです」
ボクシングに限らず、体重管理は競技生活を送る上で重要になる。入江のように減量をやり遂げるには何が必要か。
「『食べる』を考えないようにすればするほど、逆に『食べる』が頭の割合を占めてくる。でも、やっぱり自分が目指している最終的なゴールはどこなのかを考えたら、頑張るしかないという思考になる。私だったら東京オリンピック金メダル。常にゴールを持ち続けることが大切だと思います」
しかし、目標はブレやすい。入江自身も小6で金メダルを獲りたいと夢を持った。それは男の子がプロ野球選手に憧れるのと同じようなもの。
「最初はふわふわとしたものでも、目の前にある大会とか目標を一つ一つ、クリアしていくにつれ、道筋がどんどんはっきりしていった。目の前の一つ一つを頑張っていたら、いずれ近づく。一日一日、今ある5分とか少しの時間でも大切にできる人が最終的に強くなるのかなと、私は思います」
その言葉は、体重管理が求められる競技のみならず、“強くなりたいアスリート”すべてに響くものだった。
(27日掲載の後編は「入江聖奈が描く女性としてのキャリア」)
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)