「シャワー室に入ったら全員、毛がない!」 同僚のVIO処理に衝撃、白パンツには女子選手特有の悩み――岩渕真奈×登坂絵莉「女性アスリートとボディケア」
むだ毛のコンプレックスも「人の目を気にせず、自分が快適であればいい」
登坂「あと私はユニフォームが水着のような形なので、わき毛はかなり気にしてた。剃っても毛穴に黒いプチプチが見えると、わき毛が生えていると思われたらどうしようって、精神的にツラかった。脱毛でその悩みは解消されたけど」
岩渕「絵莉の毛がどっから生えていても見ていないよ! 私もむだ毛、濃いよ? ひげも剃るし。眉毛なんて、放っておいたらボーボーだもん。ちょっとやそっと生えても気にしなくていいんじゃない? それも自分だし、個性だし」
登坂「いや、誰も見ていないだろうし、気にしなくていいのかも知れないけれど、『見えちゃうかも!?』と思うとツラくなるのが私なの!(笑)」
岩渕「まあ私も欧州のチームに移籍したばかりの頃は、それこそ1本でもむだ毛が生えると『ウワッ』と慌てていたな。変わったのはイングランドのチームに移籍してから。ちょっとぐらい生えていてもいいや、って気にしなくなった」
登坂「それはどうして?」
岩渕「欧州は自我を出していかないと生き残れない世界。だから、周りに合わせる必要がなかったんだよね。その価値観から受けた影響が大きいと思う。そもそも欧米の選手たちは、VIOは剃っても、わきや胸、すねの毛は生えっぱなしだから、日本人の感覚からすると不思議。逆に向こうからすると『何ですね毛なんて剃っているの?』という感じ。そこは文化の違いで、分かり合えない(笑)」
登坂「そっかぁ。私、小学校の頃から手足が毛深くて、好きな子に『すね毛が深い』と言われて、すごいショックを受けた経験があるのね。体育のときは手と脚を覆うように体育座りしていたし、ずーっとむだ毛にコンプレックスがあった。でも今、真奈ちゃんに世界にはいろんな人がいると言われて、何か、すごい気が楽になったよ」
岩渕 「それはよかった。むだ毛があってもなくても、人の目を気にするのではなく、自分が快適であればいいと思う。剃らなければいけないルールもないし、無毛になりたければ一生懸命、貯金をすればいい!」
登坂「そうだね。世界にはいろんな価値観があるし、選択肢も色々ある。そのこと知っておくと、気が楽になるよね」
※VIO Vライン(ビキニライン)、Iライン(陰部の両側)、Oライン(肛門付近)を指す言葉。
(後編へ続く)
■岩渕 真奈 / Mana Iwabuchi
1993年3月18日生まれ。東京都出身。2007年、14歳で日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の一員として、当時の国内トップリーグ、なでしこリーグに初出場。16歳でA代表デビューを飾り、11年の女子ワールドカップではチーム最年少の18歳で優勝に貢献した。2012年11月、ドイツ・女子ブンデスリーガのTSG1899ホッフェンハイムへ移籍。その後、FCバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)―INAC神戸レオネッサ(日本)―アストン・ヴィラLFC(イングランド)を経て、2021年5月からイングランドのFA女子スーパーリーグのアーセナル・ウィメンFC、トッテナム・ホットスパーFCウィメンでプレー。2023年9月、現役引退を発表した。日本代表として女子ワールドカップは2011年(優勝)、2015年、2019年大会、五輪は2012年ロンドン大会、2021年東京大会に出場。
■登坂 絵莉 / Eri Tosaka
1993年8月30日生まれ。富山県出身。至学館大学大学院健康科学健康科修士課程修了。小学3年生の時、国体で優勝経験のある父の勧めでレスリングを始める。至学館大学進学後、2012年~15年に全日本選手権4連覇を達成。2013年~15年に世界選手権3連覇の戦績を残す。2016年、至学館大学大学院に進学。同時に、東新住建に入社し女子レスリング部に所属する。リオデジャネイロ五輪では決勝でロンドン五輪銀メダリストのマリヤ・スタドニク(アゼルバイジャン)と対戦。試合時間残り13秒で片足タックルを決めて3-2と逆転。金メダルに輝いた。プライベートでは2020年に結婚、2021年に男児を出産し1児の母に。2022年に現役を引退。現在、メディア出演、イベント出演、講演活動などに取り組み、レスリングの普及や引退後のアスリートのセカンドキャリアの選択肢を広げるべく活動する。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)