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「この生きづらさから逃げたい」 高2の冬、突然の病に困惑も…広場恐怖症との共生を決意させた言葉――ゴルフ・菅沼菜々

「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を展開する。今年は「心とカラダを満たす『幸せ』の選択」をテーマに、3日から12日まで10日間にわたってアスリートのインタビューを掲載。高みを目指し、心身両面で全力を尽くすアスリートたちの姿を通して、一人ひとりの女性が“自分らしく”、幸せな日々を過ごすためのヒントを探す。

「病との共生と、自分らしさの貫き方」をテーマにTHE ANSWERのインタビューに応えた菅沼菜々【写真:増田美咲】
「病との共生と、自分らしさの貫き方」をテーマにTHE ANSWERのインタビューに応えた菅沼菜々【写真:増田美咲】

「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」3日目 菅沼菜々インタビュー前編・不安障害

「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を展開する。今年は「心とカラダを満たす『幸せ』の選択」をテーマに、3日から12日まで10日間にわたってアスリートのインタビューを掲載。高みを目指し、心身両面で全力を尽くすアスリートたちの姿を通して、一人ひとりの女性が“自分らしく”、幸せな日々を過ごすためのヒントを探す。

 3日目は「広場恐怖症」という困難を抱えながら、ツアー3勝を挙げているトッププロの菅沼菜々(あいおいニッセイ同和損害保険)が登場。テーマは「病との共生と、自分らしさの貫き方」。移動の制限というプロゴルファーにとって致命的とも言える壁にどう向き合い、そしてなぜ彼女は「自称アイドル」として規格外の発信を続けるのか。前編では、突然の病に襲われた高校時代と、絶望の淵で彼女を救った“アイドルの言葉”について振り返った。(取材・文=金 明昱)

 ◇ ◇ ◇

 女子プロゴルファーの菅沼菜々は2018年にプロテストに一発合格し、2023年には2勝をマーク。そして2025年5月、パナソニックオープンレディースで、1年7か月ぶりとなるツアー通算3勝目を劇的な復活優勝で飾った。

 最終日18番、グリーン奥からのアプローチをわずか40センチに寄せたあの「神の一打」は、年間表彰式でベストプレーにも選出された。華やかな笑顔とアイドルさながらのビジュアルでファンを魅了する彼女だが、そのキャリアを語る上で避けて通れない、もう一つの現実がある。「広場恐怖症」という、移動の制限を伴う病と共に戦っていることだ。

 飛行機や新幹線に乗れない。渋滞が怖い。トンネルが怖い。特定の場所において、強い恐怖や不安を感じてしまい、日常生活に支障をきたす。それが広場恐怖症だ。世間一般にはまだ認知度が低く、理解されにくいこの症状が彼女を襲ったのは、高校2年生の冬だった。

「最初は『無気力症候群』って言われたんです。高2の時、なんかもうゴルフ辞めたいなーってなっちゃって。メンタル的にしんどくなって心療内科に行ったら、そう診断されました。でも本当に大変だったのは、そこからでした」

 それまで当たり前にできていたことが、一つ、また一つと「恐怖」に塗り替えられていった。部活の遠征バスや電車に乗れなくなった。生活のあらゆる場面が、急に牙を剥き始めたのだ。

 決定的な出来事は、学校帰りの電車内で起きた。

「いつもと違う路線の、快速電車に乗っていたんです。快速だから駅を飛ばしますよね。その『駅に止まらない』という状況に、急にドキドキして……。頭が真っ白になって過呼吸になり、意識が半分なくなるような感覚でした。周りは普通にスマホをいじったり本を読んだりしているのに、自分だけ急に違う世界に放り込まれた感じで。次の駅で降りて、すぐにお母さんに電話しました。あの時は本当に怖かった。電車って普通に乗れるものだったのに、急に“逃げられない場所”に変わってしまったから」

 映画館も、美容院も行けない。扉が閉まり、自分の意思で外に出られない空間すべてが敵になった。

「周りに気づかれないように、じっと耐えるしかないんです。でも、心の中はパニック。電車も混んでいない、ただの夕方の車内なのに、私にとっては檻の中に閉じ込められたような感じですよね……。そこからですね、もう公共交通機関には一切乗れなくなりました」

 高校生の頃、彼女は一度、ゴルフを完全に手放している。

「ゴルフも、もう面白くないとなってしまって……。何もできないから生きづらさはありましたね。それでお父さんとお母さんに『もう、道具はいらないから捨てといて』と言ったんです。7か月間、一切クラブを握りませんでした。ゴルフで学校に行っていたから、勉強もできないし大学も行けない。介護や管理栄養士の専門学校を調べたりしていました。辞めた先の未来なんて、当時は何も見えていませんでした。ただ、この“生きづらさ”から逃げたい一心だったんです」

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金 明昱

1977年生まれ。大阪府出身の在日コリアン3世。新聞社記者、編集プロダクションなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めた後、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。2011年からは女子プロゴルフの取材も開始し、日韓の女子ゴルファーと親交を深める。現在はサッカー、ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。著書に『イ・ボミ 愛される力~日本人にいちばん愛される女性ゴルファーの行動哲学(メソッド)~』(光文社)。

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