指導者の遠慮は「選手に伝わる。だから…」 片岡安祐美が考える、男性指導者と女子選手の理想の関係
女性アスリートにとって「月経は後回しにしてはいけないこと」
大学の女子サッカーチームの監督を務める三壁さんは、アプリやノートを活用して部員の月経について把握してきたが、記入を忘れたり、続かなかったりする部員もいたという。片岡さんは指導者が選手のコンディションを把握することは重要としながらも「自分が女性で生まれて、スポーツをやっている。月経は後回しにしてはいけないこと。本当に見て見ぬふりをしてはいけない」と力説。誰かに見せるためではなく、一人の女性として選手自身で把握することを求めた。
パフォーマンスの向上はアスリートにとって重要だが、その前に一人の女性であることを忘れてはいけない。「私は(選手時代に)見て見ぬふりをしている立場だったので、すごくだめなことをしてしまっていたと痛感している。自分が自分の体を知るためには絶対に(月経の管理を)やっておいた方がいいし、スポーツにおけるパフォーマンスも確実に上がると思う」。女性アスリートの先輩として、次世代にメッセージを送った。
男性だからではなく、女性同士でも意外と知らない互いの月経事情。「月経を食事、睡眠などの一部と位置付けて自分自身で管理できるようになれば、特別なことではないと分かる。そうすれば恥ずかしさも変わってくるのでは」と來田教授。女性アスリートの指導者向けの検定やテキストも出ており、片岡さんも「選手だけでなく、選手と指導者のみなさんが聞く講習会があったらいいな」と要望した。
イベントでは女性アスリートを指導する男性指導者からの質問も寄せられた。「女子学生との距離の詰め方に困っています」という悩みには女子学生ではなく、一人の選手として向き合う重要性を強調。「指導者の遠慮は選手に伝わる。遠慮があるからこそ、何気ない一言が嫌な気持ちにさせることもあるのでは」。男子選手を指導してきたからこその意見を伝え、言葉や場所を選ぶ配慮は必要でも、過度な遠慮は逆効果であることを示した。
「女性アスリートは男性アスリートよりも自信を高めにくいと感じたことがありますか」という質問には、実際に指導した男子選手のエピソードを紹介。「練習中に何も言われなかった選手が『安祐美さん、俺には何もないんですか。何も言われなかったので』と言ってきた。『良かったよ、ナイスプレー』と伝えると安心した顔で戻っていった」。男と女の性別ではなく、一人ひとりの個性の問題。性別で区別しないことの大切さを説いた。
1時間に渡って行われたトークセッション。片岡さんはイベント終了後、「指導経験もなく、マネジメント、コーチング業の勉強をしたことがないまま24歳でいきなり監督になった。三壁さんや來田先生が仰っていたことが勉強になった。大事なのは、一人の人間として扱うこと。性別や年齢、生まれ育った場所ではなくて目の前にいる一対一として向き合うことが大事なんだとすごく感じました」と振り返り、新たな学びを得た様子だった。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)