女性アスリートの自己肯定感が低いのはなぜか 女子サッカーWEリーグが持つ社会的意義
クレドを「選手たちの言葉」で作った狙い
岡島「そうですね。『WE』には『私たち』という意味もありますから。WEリーグ発足をアナウンスした当初は、『プロサッカーになるとはどういうこと?』『サッカーをやりながら会社員として社会保障もされているので、このままでいいです』という声が選手たちからありました。SNSを見ていても不安の声がすごく多かったんです。
その不安を解消し、プロになるとはどういうことかを理解し、自覚を持ってもらうためには、ミーティングや研修だけでは足りない。自主的に何か目標を作ってもらうことが必要だと考えました。そこで、クレドの中身は選手たちの言葉で作っていこうと決めました」
井本「プロスポーツの動きとして、非常に画期的ですね。『WE PROMISE』のクレドが決まるまでの経緯を詳しく教えてください」
岡島「突発的にできたものではなく、きちんとプロセスを踏んでいるんです。まず、11クラブの代表選手たちによる『WE MEETING』というオンラインミーティングを開催してきました。そこでは様々な議論を展開してきていますが、私と選手1人1人が話をする機会も設けました」
井本「リーグのチェアと直接話す機会というのも貴重ですね」
岡島「そこではまず女子サッカーの歴史や、現在の日本女子サッカーの世界での立ち位置などについて話しました。例えば、私は1970年代にサッカーをしていたのですが、1977年、当時所属していたチームが台湾での国際試合に単独チームで出場したことがあります。
なぜ代表ではなく単独チームだったのか? それは当時、日本サッカー協会が女子の登録を認めていなかったからです。その後、ブレークアウトルームにして、選手たちが私に何でも聞ける時間を設けました」
井本「今は女性も日本代表として当たり前にプレーしていますが、そういった歴史的背景を知ることは、非常に大切ですね」
岡島「また、選手全員が出席する3日間の『WEリーガー研修』を実施して、そこで最も選手たちの心に効いたのが、元Jリーガーの中村憲剛さん、播戸竜二さんの話です。
彼らにはプロ選手としてサッカーをすることはどういうことか、という話をしていただきましたが、長い間、プロとして活躍してきた選手に話をしていただいたことは、とても大きかったと思います。その後、選手の意識が少しずつ変わり、SNSでの発言も前向きに代わっていきました。
それから、『WEリーガー研修』では、専門家による女性のエンパワーメントやジェンダー問題、女性の身体について講義を行っていただきました。そして、11クラブの代表者の選手にはクレドに関する宿題を出しました。
クレドを作るために『私たちは将来を担う子どもたちに何々を約束します』『応援してくれるファン・サポーターに何々を約束します』『自分たちが生活する地域・社会に何々を約束します』と、『何々』に入れる言葉について各クラブ内で意見を出し合い、議論をしてもらうようお願いしました」
井本「私は初めてこのクレドの言葉を見たとき、プロセスをちゃんと踏んで生まれたんだろうなと思ったんです。すごく考えられて、生まれてきた言葉だろうなと」
岡島「その通りです。最初出てきたのは割と『プレーする女の子を増やしたい』『見てくれる子どものためにプレーをする』という言葉でした。でも議論を重ねるなかで、最終的には『女の子だけではなく、男性も子どもも大人もみんな大切だよね』という言葉が選手から出てきたんです」