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「出産のタイムリミット」を意識した30歳の転機 妊娠公表の裏で葛藤、アスリートとして芽生えた恐怖心――ゴルフ・有村智恵「女性アスリートのライフプラン」

女性がキャリアと結婚を「当たり前」に両立する時代

 一方で、国内ツアーも近年はツアー会場に託児所が設置されるなど、少しずつ子供を持つプロゴルファーを支える環境整備も始まっている。

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「日本も一昨年くらいからツアー会場での子育て支援の動きが始まりましたが、10年前の米ツアーではそれがスタンダードでした。2013年から米ツアーに参戦しましたが、当時から託児所も毎週の試合会場にありましたし、子供の教育プログラムやアクティビティーも充実していて、ただ預かるだけでなく、近くの博物館に連れて行ってくれたり、カリキュラムも整っているという話も聞いていました。こうした問題は当事者や、その年齢にならないと真剣に悩まない部分ではあると思いますが、女子プロゴルファーは必ず直面する問題でもあるので、少しずつ意識できるような環境になっていけばうれしいです」

 アメリカに比べて日本の動きは遅いとはいえ、女性のツアー復帰をサポートする施策が増えてきた。こうした動きが要因なのかは分からないが、昨年12月に木戸愛(フリー)が男子プロの神農洋平と8月に入籍していたと公表。同月に松森彩夏(スターツ)がJリーグ・横浜FCの吉野恭平との結婚を発表。2月に入って藤田光里(AKRacing)や江澤亜弥(NSW)がいずれも会社員男性との結婚を発表した。

「今は女性にも選択肢がたくさんある時代。プロゴルファーだけじゃなくて、女性がキャリアを継続して、結婚も両立できるのが当たり前の時代になってきたからこそ。自分の人生を好きに歩んでいいという風潮になってきたのかなと思います。今思うと、それが当たり前なんでしょうけれど」

 有村が22年シーズン終了後にツアーを休養し、自身のインスタグラムで「妊活に専念する」と公言したのは、そうした背景と決して無関係ではなかった。

(後編に続く)

■有村 智恵 / Chie Arimura

 1987年11月22日生まれ。熊本・熊本市出身。10歳からゴルフを始め中学時代に全国大会優勝を果たすと、名門・東北高に進学。卒業後の2006年のプロテストに合格した。08年6月のプロミスレディスでツアー初優勝を飾ると、翌09年は年間5勝を挙げて賞金ランク3位に躍進。12年9月の日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯で国内メジャー初制覇を果たした。13年から米ツアーに挑戦し、16年に日本ツアーへ復帰すると、18年のサマンサタバサガールズコレクションで6年ぶりの復活優勝を遂げた。21年12月に結婚を発表。22年11月に妊活で休養を宣言し、昨年11月に第1子妊娠を発表した。日本ツアー通算14勝。近年は30歳以上の女子プロゴルファーの大会「KURE LADY GO CUP」を立ち上げ、ゴルフ番組MCを務めるなど活躍の場を広げている。

(金 明昱 / Myung-wook Kim)


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金 明昱

1977年生まれ。大阪府出身の在日コリアン3世。新聞社記者、編集プロダクションなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めた後、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。2011年からは女子プロゴルフの取材も開始し、日韓の女子ゴルファーと親交を深める。現在はサッカー、ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。著書に『イ・ボミ 愛される力~日本人にいちばん愛される女性ゴルファーの行動哲学(メソッド)~』(光文社)。

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