女子サッカー界の「出産=引退後」という常識 妊娠が分かり、引退を考えた岩清水梓の転機
お腹が大きくなり、自分の復帰より願った「無事に生まれてきて」
そんなとき、シーズン終了後のプレナスなでしこリーグ2019表彰式の会場で、日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長夫人である土肥美智子医学博士と言葉をかわす機会に恵まれた。そこで「JISS(国立科学スポーツセンター)に妊娠期をサポートするプログラムがあるから話を聞きに来ない?」と声を掛けてもらった。
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さっそくJISSを訪れ、サポートプログラムに参加。なでしこジャパンで一緒だった女性トレーナーが週2回、一緒にトレーニングに付き合ってくれた。行っていたのは柔軟性と可動域の維持、筋力維持を目的としたメニューだった。しかし、出産が近づくにつれてどんどんお腹が大きくなり「柔軟性が保てなくなった」という。
そして、次第に体が変化していく。アスリートとして、復帰後のことを考えれば不安がないわけではない。それでも、「その頃にはもう自分の復帰のことより、お腹の子どもが無事に生まれてきてほしいということしか考えていなかった」と余裕がなかった当時を振り返った。
2020年3月上旬、無事に男の子を出産。岩清水は現役プロサッカー選手でありながら、母になった。
(後編へ続く)
■岩清水 梓 / Azusa Iwashimizu
1986年10月14日生まれ、岩手県出身。小学1年からサッカーを始め、中学1年にNTVベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)のアカデミー組織・NTVメニーナのセレクションに合格。高校生になるとトップチームのベレーザに昇格。以来、ベレーザ一筋の生え抜き。日本代表でもアンダー世代で活躍し、2006年にA代表デビュー。2011年のドイツW杯では世界一に輝き、男女通じて日本サッカー界初となる快挙を成し遂げた。所属チームではなでしこリーグを12度制覇。代表では北京とロンドン(銀メダル)と五輪に2度出場、W杯には3度出場(優勝、準優勝各1度)。日本の女子サッカー界を代表するDF。
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