[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

女子サッカー界の「出産=引退後」という常識 妊娠が分かり、引退を考えた岩清水梓の転機

32歳で結婚し、妊娠が分かったとき、岩清水は引退を考えたという【写真:松橋晶子】
32歳で結婚し、妊娠が分かったとき、岩清水は引退を考えたという【写真:松橋晶子】

妊娠が分かり考えた「引退」、それを一変させた母の一言

 岩清水は当時をこう振り返る。

本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】

「前例がなさ過ぎただけかもしれないですね。みんな敢えて口にはしなかったですけど、そういった空気感がありました。ちょうど引退のボーダーラインが30歳前後だったこともあったのかもしれません。だから、結婚や出産はその後でもいいよね、と」

 ただ、全く前例がないわけではなかった。代表でまだ若手選手だった頃、8歳年上の宮本ともみ氏(現女子日本代表コーチ)が子どもを連れて合宿に参加。「自分がそうなるとは思っていなかった」ものの、妊娠が分かったときは「宮本さんの存在が背中を押してくれた」と口にする。

 2019年。32歳で結婚し、妊娠が分かった当初、岩清水は引退を考えたという。

「ちょうどキリがいいから辞めようかなと思っていました。自分の現役を1年、1年と考えたなかで、何か転機が来たのかなと。だから、最初はこれを機に……って思ったんです」

 代表に一旦区切りをつけ、チームでもキャプテンから退いた。妊娠を機に2019年のシーズン途中に離れたベレーザはリーグ5連覇を達成した。「それまでは戦力だったけど、自分がいなくてもチームはやっていけるんだなと、若手選手の成長も感じていて。自分のなかで、そろそろかなという雰囲気があった」。引退するにはちょうどいいタイミングだった。

 ただ、そんな考えを一変させたのは、母の一言だった。

「実家で相談したら、母は昔、宮本さんと代表で一緒にやっていたことを知っているので『宮本さんがやっていたじゃない?』『続けたらいいじゃない』と言われたんです。実家から帰る頃には考えが180度変わっていた。びっくりですよね(笑)。母の言葉によって、今の自分があるんです」

 現役サッカー選手の妊娠、出産の前例はそう多くはない。所属するベレーザでも初めてのことで、情報は極端に少なかった。妊娠が分かってからも軽く体を動かしていたが、その後の体調の変化が分からず、ほどなくしてチームから離脱。故障者のリハビリの要領でトレーニングを継続していた。

「安定期に入る前までの体の動かし方が分からなかった。今思えば、もうちょっとトレーニングできたと思います。対人や試合はさすがに無理だけど、安定期に入るまではお腹もそんなに大きくないし、グラウンド内でのトレーニングは正直、動こうと思えば動けるんです。でも、やっぱり安定期に入るまでは不安じゃないですか。だから不安がある以上は、体を動かすかどうかの判断は自分自身に委ねられることになって、自分はできなかった」

1 2 3
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA Jleague
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集