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世界が認めるサッカー女性審判員・山下良美さん、「苦しい思い」の先に見た最も“感激した”光景

主審として最も印象に残る試合は2015年皇后杯決勝。今も女子サッカー発展への想いは強い【写真:徳原隆元】
主審として最も印象に残る試合は2015年皇后杯決勝。今も女子サッカー発展への想いは強い【写真:徳原隆元】

2015年12月の皇后杯決勝で「女子サッカーの力を感じた」

 山下さんは元々、女子サッカーの発展に微力でも貢献したいという思いを持って、審判員になることを決めた。

 これまでJリーグ主審や2022年カタールW杯審判員など、男子の試合で女性として初となる様々な実績を積み、今年はアジアカップで主審を担当。これも大会史上初のことだった。

「女性審判員初」という実績を積み上げるたびに注目されたが、自身が最も印象に残る試合に上げるのは、女子サッカーの国内大会。2015年12月、主審を務めた皇后杯決勝、アルビレックス新潟レディースとINAC神戸レオネッサの試合だ。

「大会史上最高の観客(2万379人)を動員した試合でした。フィールドに入り、たくさんの観客で埋まったスタジアムを見渡した時、『女子サッカーは、こんなにもたくさんの人を惹きつけられる魅力があるんだ』という力を感じました。その力を感じて、感激というか……うん、嬉しさがありましたね」

 一方、審判員を目指す女性がなかなか増えない現状には、課題を感じている。

「女子サッカーは国内の競技人口も増え、世界のトップチームで活躍する選手も増えましたが、審判員の希望者はまだまだ少ないのが現実です。

(増えない理由は)審判員は厳しい職業ですし、ちょっとネガティブなイメージもある。どのように増やせばよいのかは、難しい問題ですし、私自身、その答えは見つかっていませんが、もっともっと、トップリーグで笛を吹く女性審判員が増えてほしい」

 審判は決して楽しい役割ではない。「何のためにこんな苦しい思いをしてトレーニングをしているのか」。そう思う時もある。だが、山下さん自身には進むべき道に迷いがない。

「毎試合、選手、そして観客の心が動く試合を担当したいという思いで、笛を吹いています。サッカーの魅力を最大限に引き出す。これが私の目標です。

 自分がこんなにも魅了されているサッカーで、そんな目標を掲げられる審判員は、本当に素敵な仕事。経験を積むほど、魅力はどんどん膨らみます。ここまで『次の試合も頑張ろう』という気持ちできました。今後も1試合1試合、全力を尽くし、できるだけ長くフィールドに立ちたいと思います」

■山下 良美 / Yoshimi Yamashita

 1986年2月20日生まれ、東京都出身。4歳の時、兄の影響でサッカーを始める。東京学芸大学4年時に、サッカー部の先輩である坊薗真琴さん(現・サッカー国際審判員)に誘われ、学生の大会で初めて審判員を務める。卒業後は大学の非常勤職員で働きながら、都内のクラブチームでプレー。同時に審判としての活動も続け、2012年に女子1級(現在は廃止)審判員、19年に1級審判員に認定された。同年の女子W杯フランス大会で主審を担当して以降、21年にJリーグ、22年のAFCチャンピオンズリーグ、23年のアジアカップで大会史上初の女性主審となる。また、22年カタールW杯では史上初の女性審判の1人に選出。6試合で第4審判を務めた。同年7月、女性審判員として初となるプロフェッショナルレフェリー契約を結ぶ。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)


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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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