「子供できたら詐欺なのでは…」 決断に迫られた妊娠or世界大会、罪悪感に苛まれ「私は選べなかった」――陸上・佐藤友佳

苛まれた罪悪感「子どもができたら詐欺のように思われるのでは…」
――27~8歳の頃から子どもが欲しいと思い始めたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】
「私の母はすごく若い時に私を産んでくれて、子どもを持つ、家族を持つということに憧れがすごく強かったんです。20代前半でできたら、それはそれでママさんアスリートとして復活していたかもしれない。でも、そういうタイミングもなく、20代後半から30歳を境に、そういう気持ちがちょっと強くなっていきました」
――所属先が後押ししてくれたのも大きかったわけですね。
「『世界陸上を目指したい、でも子どもも欲しい』というのは身勝手なんじゃないかとすごく思っていたんです。なんか悪いことを考えている気分になって……。例えば、『アスリートとして世界を目指しています』と言っているのに、子どもができたら詐欺のように思われるかもしれない。今までトレーニングキャンプをさせてもらって、こんだけ海外遠征に行って、支援をいただいているのにすごく失礼じゃないかという後ろめたさ、罪悪感がすごくあったんです。
なので『引退します』とも『子どもが欲しい』とも会社には切り出せずにいました。でも、悩んでいても仕方ないと思って全部打ち明けたんです。『どっちも捨てたくないんです』と。その時、私の競技を応援しているというよりは『佐藤友佳を応援しているよ』と言っていただいて、すごく心がスーッとしたというか、認めてもらった気持ちになって。それがすごく嬉しかったです。
一般の社会なら、会社で働きながら子どもが生まれて、産休や育休を取るって普通のことかもしれない。それがアスリートとなると、悪者じゃないけど、後ろめたさがある妊娠になってしまう。だからこそ、所属先の言葉には本当に救われました。それまでは悩んで悩んで、会社にそんなことを言っていいのか、きっぱり辞めてしまうべきか。辞めてしまったら、別のところに所属して陸上を続けるわけにもいかない。そういう葛藤がいろいろありました」
――実際に妊娠を報告された時の反応は?
「『おめでとうございます』と言ってくださって。女性の妊娠に対して、悪く取られたらどうしようと思っていたのですが、お祝いをしていただいて、私も心から喜べましたし、周りの方が喜んでくださるのもすごく嬉しかったです」
――今回は「国際女性デー」の文脈でお話いただきましたが、佐藤さんは一人の元アスリートとして女性として、これからのスポーツ界に願うことを聞かせてください。
「スポーツ界は男性コーチが多く、女性アスリートと男性コーチのコミュニケーションは課題のひとつかなと思います。また、女性特有の体のことで思うようにスポーツとの関わり方ができてないところもまだまだあるので、こういう学べる機会がもっとあるといい。月経、PMS、妊娠など、アスリートとしての知識がこの世の中にもっと出回ってくれたら。アスリートが婦人科にかからなくても気軽に相談できる窓口があるとうれしい。私はたまたまJISSが利用できたから行けただけで。もし、そこに辿り着けていなかったら悩みを持ったまま競技生活が終わっていたのかもしれない。そういう選手のためにも、誰でも相談できる窓口がこれからできたらいいなと思います」
■佐藤 友佳 / Yuka Sato
1992年7月21日生まれ、広島県出身。中学時代に陸上を始める。東大阪大敬愛高(大阪)で七種競技から投てき3種目に切り替え、次第にやり投げ競技に絞る。高校時代、2009年にイタリアで行われた世界ユース選手権に出場。2011年アジア選手権で銅メダルを獲得。東大阪大卒業後、小学校の職員として働きながら競技を続けていたが、2018年にニコニコのりに所属。2019年、世界選手権に出場。2020年の日本選手権で初優勝を飾る。自己ベストは62.88メートル(2019年日本選手権)。今年1月に現役引退を発表した。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)
