五輪、結婚・出産、引退…「人生ってバレーだけじゃない」 荒木絵里香が高校生28人に伝えた3つの転機
部活指導で選手にかけた「戻るときは素早く!」の真意
その後は自身の将来をスポーツ、ライフ、家族、マネーの項目に分けて考える「人生設計シート」を記入するワークショップを実施。さらに、質疑応答では次々と手が挙がり、荒木さんと同じオリンピック出場を夢に持つ生徒からは「海外と日本のプレースタイルの違いは?」との質問が。
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頷くように聞いていた荒木さんはミスをしてしまった場合を例に挙げ、「責任の範囲をすごくはっきりさせるという違いを感じた。『“ごめん!”じゃなくて、ちゃんとやってよ』と言われた」と海外特有の厳しさを伝えながら、「逆に日本は何とか助ける、カバーする文化がある。どっちが良い悪いではなく、その差はすごく感じた」と明かすなど、一つ一つの問いに誠実に向き合った。
1時間半にわたる講演後には、場所を体育館に移して部活指導を実施。インターハイは県予選決勝で敗れた悔しさをバネに、1月の春高バレー出場を目指すチームの練習を見守った。キャプテンの掛け声で、荒木さんの周りに円を作った選手にかけた言葉は「戻るときは素早く!」だった。理由は明快だ。
気持ち一つで変えられること、全員が変われば全体が変わる。「それは今すぐできること」と求めた。さらに「ただ声を出して応援して盛り上げることも大事だけど、質をもっと上げることはできる」とのアドバイスも。「早く戻って!」と要求する声かけがあってもいい。反対に「ナイスフォロー!」と褒める声もあってもいい。「全体の士気が上がるような声かけができれば、今出ている声がさらに良いものになる」と主将として日本代表を牽引した大先輩の助言に部員の表情も引き締まった。
練習中、コートサイドに立った荒木さんに自ら質問しに行く選手もおり、荒木さんも親身になって答えた。終盤には何度もアドバイスを求めに来た選手に親指を立て、グーサインを送る姿も。練習中、上級生・下級生関係なく全員が声を出し、活気溢れる雰囲気で1時間の練習を見届けた荒木さんは「本当に応援したくなる、頑張ってほしいと心から思えるチームでした。コートの中の選手はもちろん、本当にみんなで良くしようという思いが伝わるから、インターハイの悔しさをぜひ晴らして、春高を決めてもらいたい。全国大会で会えることを楽しみにしています」とエールを送った。
主将の横田真央さん(3年)は「大選手に練習を見てもらえて、そのうえでアドバイスをいただけて、本当にチームにとって良い刺激になり、予選前に、より一層気合が入るような1日。これからアドバイスをもとに頑張りたい」と感激の様子。個別に助言を受けたというエースの石崎桃恋さん(3年)は「フォローがずっと自分たちの課題。そこを荒木さんから見ても言われるということは、もっと改善しがいがある。そこが一番の実になりました」と貴重なアドバイスを受け止めた。
計3時間に渡った部活動キャラバンは最後に記念撮影をして終了。荒木さんを囲む選手たちには、この日一番の笑顔が見られた。生徒にとっても、荒木さんにとっても充実した貴重な1日となった。
(THE ANSWER編集部)