「胸が揺れてる」とSNSで揶揄された体操・杉原愛子 未来に願う女性のユニフォームの選択肢
心の叫びにも聞こえた「体操を見てほしい」の言葉
レオタードの話をさせたら、ワクワクが止まらない。キラキラのレオタードで大好きな体操に打ち込むために、次の仕込みが進んでいた。聞けば、所属する武庫川女子大の練習着をデザインしたらしい。イメージは着物仕様。フィギュアスケート・女子シングルのエフゲニア・メドベージェワ(ロシア)やアイスダンスの小松原美里の衣装からインスピレーションを得たという。
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「まだ誰もやっていないことを真っ先にやることが好きなんです。人と違ったものというか、注目されるようなものを作ることが好き。だから、自分の名前『スギハラ』と付けた技があるんです。ちょっと変わっているんですよね(笑)」
自身の演技で好きなポーズは「ゆかの最後の決めポーズ」。普段練習する大学の体育館には、そのポーズがプリントされた大きな弾幕が飾られていた。「好きなレオタードを着て、好きなポーズが綺麗に撮影されていたら、『わあ、最高!』ってなる」と興奮気味に話す姿からはレオタード愛が溢れていた。
「体操は採点競技。立っているだけでボディラインが綺麗で、なおかつ美しい選手でありたいので、美しさを重視してレオタードを作っていただいています。それに、やっぱりラインストーンがあった方が綺麗に見えるし、キラキラと輝いて見える。立っているだけで画になる。そこを一番求めているかなと思います」
当たり前だが、女性アスリートは女性だ。女性を性的対象とする者からすれば、女性アスリートも同様に見えるのかもしれない。しかし、彼女たちは人生を懸けて競技に取り組んでいる。「そこじゃなくて、体操を見てほしい」と話す杉原の言葉は、心の叫びにも聞こえた。
世界は今、少しずつだが、それでも確実に変わろうとしている。知らなかったことを知り、いろんな考えや思いに対応するために選択肢が増えていく。そうやって女性アスリートが自分らしく、自分自身を表現できる場がスポーツであってほしいと願う。
【女性アスリートが自分らしく、ありのままでいるために、必要なこととは?】
「周りの声とか耳に入ることで良いことや嫌なことは絶対にあって。確かに『嫌や』と思う部分もあるけど、逆に自分のことを『めっちゃ見てくれてるな、ありがとう!』とプラスに捉えています。そのうえで自分の信用をなくさないようにするには、何が大切かを意識しています。私は一人じゃないし、家族や周りの方に支えていただいているし、味方も仲間もいるので、感謝の気持ちを忘れないでいることを大切にしています」(体操女子選手 武庫川女子大・杉原愛子)
※「THE ANSWER」では今回の企画を協力いただいた皆さんに「女性アスリートが自分らしく、ありのままでいるために、必要なこととは?」と聞き、発信しています。
(「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」6日目は「女性アスリートと体重管理」、フィギュアスケート・鈴木明子さん、新体操・皆川夏穂さんが登場)
■杉原 愛子 / Aiko Sugihara
1999年9月19日生まれ、大阪府出身。姉の影響で4歳から体操を始める。2015年5月のNHK杯体操選手権女子個人総合で初優勝し、同年7月のアジア体操競技選手権では安定した演技で団体総合優勝に貢献、個人総合でも初優勝した。翌年のリオ五輪(団体4位入賞)、コロナ禍の影響で1年延期となった2021年東京五輪(団体5位入賞)にも出場した。2017年に開催された世界選手権の平均台で披露した、足を持って2回ターンする技が「スギハラ」と命名。東京五輪の代表選考会を兼ねた大会で着用した真っ赤なレオタードが、ゆかで使用された「007&NA」の曲とともに話題になった。
<3月6日に「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベント開催>
女子選手のコンディショニングを考える「女性アスリートのカラダの学校」を6日に開催。第1部は「月経とコンディショニング」をテーマに元陸上日本代表・福士加代子さんをゲストに迎え、月経周期を考慮したコンディショニングを研究する日体大・須永美歌子教授が講師を担当。第2部は「食事と健康管理」をテーマにボクシング東京五輪女子フェザー級金メダリスト・入江聖奈をゲストに迎え、公認スポーツ栄養士の橋本玲子氏が講師を担当。1、2部ともにアスリートの月経問題などについて発信している元競泳日本代表・伊藤華英さんがMCを務める。参加無料。応募は「THE ANSWER」公式サイトから。詳細(https://the-ans.jp/event/224770/)。
(THE ANSWER編集部・出口 夏奈子)