「まじめなアスリート」こそ危険な摂食障害 鈴木明子と専門家が考える怖さと原因とは
須永教授が解説した「女性アスリートに多い3つの健康障害」
現在は摂食障害を患った女性や、その家族をサポートする活動も行っている鈴木さん。その際に心がけていることがあるといい、須永教授と考えを交わした。
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鈴木「病気に至るまでの背景が一人一人違うので、簡単にアドバイスは言えないし、言ってしまったらダメかもしれないと思っています。でも、本人もそうですが、近くでサポートしている家族もどうしたらいいか分からないと思います。なので、私自身は『頑張ろうとしなくていい』といつも声をかけています。頑張りすぎているからこそ、そうなっている事実もあるので。あとは『絶対に焦らないで』ということはお伝えしています」
須永「摂食障害は単純ではなく、原因も一人一人違う複雑なもの。私も摂食障害に関しては、むやみに『こうしてみたら?』と言えません。もし摂食障害で苦しんでいる選手がいたら保護者、指導者、周りの方が一生懸命サポートしようと、いろんな言葉かけをしてあげると思いますが、よかれと思った言葉が逆に働く可能性があります。なので、私は専門家に相談するのがいいと思います。できれば心療内科、専門の治療機関をオススメします」
続けて、須永教授は「セミナーでも最初に伝える」という女性アスリートの三主徴について解説。女性アスリートに多い3つの健康障害として「利用可能エネルギー不足」「視床下部無月経」「骨粗しょう症」を挙げ、鈴木さん、伊藤さんを含め、ディスカッションを展開した。
須永「『利用可能エネルギー不足』は運動を凄くするのに全然食べない、逆に凄く食べているのに運動しすぎでバランスが取れないなど、体を健康に維持するエネルギーが不足した状態。すると、女性ホルモンがきちんと分泌されずに無月経になったり、骨の材料の栄養が不足して骨がすかすかで疲労骨折の原因になったりします。これはどれか一つではなく、相互に関係しています。まずは摂食障害のあるなしに関わらず、自分が運動に見合った食事ができているか、エネルギー不足になっていないかを確認することが女性アスリートの三主徴を予防するために非常に重要と言われています」
鈴木「私もエネルギー不足は高校生まで、あとは摂食障害の期間もありました。加えて病気を克服して試合に出るようになっても、お肉だけは食べることが怖くて、食べられるようになったのは3年後。お肉からたんぱく質を摂れない自分と、お肉を食べて体を作れて練習できる自分と、3年間かけた究極の人体実験みたいになりましたが、後者の方がパフォーマンスは上がりました。あと、オススメはしませんが、私は体重計に一切乗らないようにしました。
摂食障害中は1日に5、6回も量って執着しましたが、五輪も2大会とも毎日量るようなことはしていません。もちろん、自分で食べた物と動きは気にしますが、それによって数字で捉えないで済むので。体脂肪は減らそうとしなくても落ちてしまい、シーズン中は生理がありませんでした。ただ、骨は摂食障害の後も検査して問題なかったんです。中学・高校時代は体も成長するけど、骨自体も成長する時期。その間の栄養がすごく大切なのでしょうか?」
須永「本当にその通りです。鈴木さんの場合、大学生になって摂食障害になりましたが、中高時代はしっかりと食べていたので、骨は成長していたので問題なかったのではないでしょうか。骨密度の成長は20歳くらいで止まります。なかでも、骨密度が一番高まっていくのが10代の中高生の年代。その時に無理な減量をして生理が止まるくらいだと、おばあちゃんのように骨がすかすかになり、ちょっとしたことで骨折しやすい状態になります」
伊藤「体重コントロールが必要な競技は、競技力と体重管理が密接に関係すると改めて感じます。競泳はもちろん太りすぎ、痩せすぎはダメですが、トレーニングの中で自分の感覚を掴めれば良かったんです。毎日体重は量っていましたが、逆に体重が落ちてしまうので、食べるのが大変で、痩せなきゃという悩みはありませんでした。タイムで結果がはっきりと出る競技なので、それぞれの競技特性によって影響することもあると感じます」