性的画像問題にある盲点 「見られて減るものじゃないし」薄かった選手側の被害者意識
中高生でプレーする現役世代に訴え「春高バレーさえ、トイレで着替えている」
自身の体験と考えを明かしてくれた大山さん。今は特に現役でプレーする10代の中高生にこうした現実を知ってほしいと訴える。
バレーボールは中高生の全国大会ですら「更衣室が十分に確保されていると言えない」という。多くは1つの会場で数面のコートを使い、コートごとに複数の試合が行われる。そのしわ寄せで、人目から隠れていると言えない場所で着替えてしまうリスクがある。
「春高バレーさえ、トイレを使って着替えています。更衣室がごった返して順番待ちをしなければいけません。特に、ウォーミングアップはTシャツで試合直前にユニホームに着替えることが多く、そうなると余計に重なって時間がかかります。そこは主催者側が用意してあげてほしいです。
また、男性指導者も時間に厳しく『早く着替えてこい!』と言われると、選手たちも焦ってしまい、更衣室に行かず、そのあたりの場所で着替えてしまうこともあります。指導者こそがしっかりと更衣室を使いなさいと指導しないといけないし、競技界全体で変えていかないといけません」
大山さんが経験したのは“女を捨てる”という価値観で生まれてしまった被害者意識の欠如。この点について、選手を育てる大人たちに訴える。
「髪の毛を短く、角刈りのようにする規則など、そういう風潮はまだまだ根強く残っています。春高バレーも髪の長いチームが出てきてもいいのにとも思いますが、すぐには変わりません。私自身、(性的な撮影について)学生時代は何も気にしていませんでした。中学の全国大会で、会場内で着替えている時にコーチにやめろと止められ、何かと思うとカメラで狙っている人がいました。
私が一番に思っているのは、やっぱり子供たちを守ってあげたいということ。Vリーグくらいの年齢、カテゴリーになれば、選手の自覚も出てくるし、控え室も守られています。一方、現状で守られていないのが子供たち。体罰とも共通するものですが、これは人権問題ではないでしょうか。女性、子供の立場的にまだまだ弱いという見られ方があるのではないかと感じています」
繰り返すが、選手側に非はない。しかし、こうした問題が消えないことも事実。特に、ネットに上がった写真は半永久的に消えることがない。今は「減るものじゃないから……」と気にしていなかったとしても、将来、大人になった時に傷つくことだってある。
最後に、大山さんはこうも付け加えた。
「こういうことがあるんだよと知ってもらいたいです。危険性が潜んでいると知ってもらえるだけで、きっと意識は変わるんじゃないか。本当はそういう人がいなくなることがベストですが、現状は難しい。だからこそ、自分の身は自分で守るという意識が必要になります。そういう教育、啓蒙活動は必要に感じますし、こうした発信を通じて少しでも知っていてほしいと思います」
■大山加奈/THE ANSWERスペシャリスト
1984年生まれ、東京都出身。小2からバレーボールを始める。成徳学園(現下北沢成徳)中・高を含め、小・中・高すべてで日本一を達成。高3は主将としてインターハイ、国体、春高バレーの3冠を達成した。01年に日本代表初選出され、02年に代表デビュー。卒業後は東レ・アローズに入団し、03年ワールドカップ(W杯)で「パワフルカナ」の愛称がつき、栗原恵との「メグカナ」で人気を集めた。04年アテネ五輪出場後は持病の腰痛で休養と復帰を繰り返し、10年に引退。15年に一般男性と結婚し、今年2月に双子を出産した。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)