不妊治療を経て、母になる大山加奈 我が子へ「どんなあなたでも素敵だよ」と伝えたい
「THE ANSWER」はスポーツ界を代表する元アスリートらを「スペシャリスト」とし、競技の第一線を知るからこその独自の視点でスポーツにまつわるさまざまなテーマで語る連載「THE ANSWER スペシャリスト論」をスタート。元バレーボール日本代表の大山加奈さんが「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務め、バレーボール界の話題、自身のキャリアからスポーツ指導の哲学まで定期連載で発信する。
「THE ANSWER スペシャリスト論」バレーボール・大山加奈
「THE ANSWER」はスポーツ界を代表する元アスリートらを「スペシャリスト」とし、競技の第一線を知るからこその独自の視点でスポーツにまつわるさまざまなテーマで語る連載「THE ANSWER スペシャリスト論」をスタート。元バレーボール日本代表の大山加奈さんが「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務め、バレーボール界の話題、自身のキャリアからスポーツ指導の哲学まで定期連載で発信する。
今回のテーマは「選手、指導者から母へ」。昨年9月、双子の妊娠を公表し、2月に出産を控える大山さん。引退後はバレーボールの普及に尽力し、育成年代に指導、講演を行う一方、スパルタ指導などスポーツ界の問題に声を上げ、常に子供たちに寄り添うメッセージを発してきた。そんな大山さんが今度は母になり、子育てに思うこととは――。不妊治療を経て、生まれてくる我が子へ想いを明かした。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
◇ ◇ ◇
「パワフルカナ」と呼ばれた名アタッカーが「ママ」になる。
「双子はリスクも高く、今の週数なら、もう管理入院していることも多いそうですが、私の場合はありがたいことにすごく順調です。(愛犬の)だいずの散歩も行けているくらい。すごく恵まれていると感じます。先生もびっくりするほどの順調さで『(身体が)大きいからかな』と言っていましたが、私も初めて心から『大きくて良かった』と思っています(笑)。
一方で、出産が近づいてくると考えることも変わってきます。今までは母体も高血圧、糖尿病になりやすかったり、私は現役時代の怪我で腰に不安があったり、また双子の場合はどちらの子が育たなかったり。そういうリスクへの不安が大きかったですが、今度は私はちゃんと子育てをしていけるのかという不安が生まれてきて、今の楽しみと不安は半々ですね」
1月9日。オンラインで取材に応じた大山さんは率直な思いを口にした。
小・中・高、すべてで日本一を経験し、高3で日本代表デビュー。同い年の栗原恵とともに「メグカナ」コンビでスター選手となり、アテネ五輪に出場した。長年の持病だった腰痛の影響もあり、26歳で引退後はバレーボールの普及に尽力し、全国の子供たちに指導、講演して回った。一方で、バレーボール界のスパルタ指導、勝利至上主義といった問題に声を上げ、常に子供たちに寄り添ったメッセージを発信してきた。
そんな大山さんが自分の子を持つ。2月に予定する出産の間近。「正直、実感はまだそこまでないんですが……」と笑ったが、母になることへの想いを問うと、大山さんらしい答えが返ってきた。「今まで子供たち、その保護者の方と関わらせてもらってきて、私が母になることでまた違った視点で物事を捉え、関わることができる。そこが楽しみなんです」。さらに深みのある指導者になることにイメージを膨らませる。
バレーボールの指導の経験は豊富といえど「ママ1年生」。もちろん、子育てとは勝手が違うことは理解している。
「バレーボール教室、単発のイベントで出会う子供は、こうやって接しようとある程度の理想を持ってやっていますが、毎日の子育てとなると、そうはいかないと思います。その分、より保護者の方の苦労が分かるようになります。指導者の方は子供たちと単発ではなく、ずっと関わっていく形は子育てに近いものがあり、そういう方たちの気持ちがより分かるようになると思っています」