生理で気づける異変の兆候 教科書には載っていない「女性アスリート」の大切な話
「女性アスリートの三主徴」はスポーツをする女性にとても大切な話
三主徴の発端になるのは、①の利用可能エネルギー不足です。
利用可能エネルギー不足とは、運動によるエネルギー消費量に見合ったエネルギーを、食事から確保できていない状態、またはオーバートレーニングの状態であること。視床下部性無月経も骨粗しょう症も、そもそもは利用可能エネルギー不足によって引き起こされます。
また、三主徴はどれか一つではなく、二つ、三つ、同時に発症しているケースが多くみられます。例えば、エネルギー不足から視床下部性無月経になり、女性ホルモンの分泌が低下。すると、骨粗しょう症になってしまう……という具合です。つまり、3つの健康障害には相互関係があり、一つ症状が出てしまえば2番目、3番目の障害も引き起こされる。しかも、長期間放置すると、カラダを「治療が必要な状態」に変化させて、回復までに長い年月がかかる場合もあります。
以前、体育会系女子大学生の現状を知るために、三主徴に関係するアンケートを実施したことがあります(対象者:1711人)。本人は骨粗しょう症かどうかは判断できないため、「疲労骨折の経験」の有無などを設問にして調査。疲労骨折については21%が「経験あり」と回答しました。また、「経験あり」の人に「疲労骨折時に月経は順調にきていたか」を問うと、「順調」が32%、「不順」は21%、そして42%が「覚えていない」という結果でした。
利用可能エネルギー不足や骨粗しょう症は、医師や専門家ではないと気づけません。しかし、生理をみれば三主徴の兆候にも気づけます。もしも、疲労骨折が生理不順や無月経と関係していると知っていれば、「覚えていない」と回答する人数もグッと減ると思います。
3か月以上、生理が止まってしまったら(※1)、「骨が折れちゃうかもしれない」と気づいてほしい。その気づきが、重症化を防ぐのです。
教科書には載っていませんが、「女性アスリートの三主徴」はスポーツをする女性にとって、とても、とても、大切な話です。男女を問わず、アスリートにはケガはつきもの。しかし、なかには女性に多いもの、男性とは異なる原因によって発生するものもあると、知って欲しいと思います。
次回は三主徴の発端となる利用可能エネルギー不足について、もう少し、詳しくお話ししていきましょう。
(※1)月経が3か月以上ない場合、三主徴にあたる視床下部性無月経の疑いがあります。1~2か月、生理がないというときは、多くの場合、問題はありません。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)