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WBCで日本のストライクゾーンも変わるか タブーだった高めの変化球を使った2人の侍J投手

野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は日本代表・侍ジャパンの14年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。「THE ANSWER」は大会期間中、多くのプロ野球選手を含め400人以上が参加するパフォーマンスアップオンラインサロン「NEOREBASE」を主宰し、最速155キロを投げる自身を実験台にしてピッチング理論やトレーニング理論を発信するピッチングストラテジスト・内田聖人氏が、独自の目線で世界の投手を分析する連載を展開。今回は決勝を含め、日本の米国ラウンドを現地観戦した内田氏が大会を総括する。防御率1位を記録し、世界一の生命線となった侍ジャパンの投手陣から学びと発見として残ったことが3つあったという。「球速」について語った前編に続き、後編は「高めのストライクゾーン」と「データ」の活用について。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

大谷翔平(左)とダルビッシュ有【写真:Getty Images】
大谷翔平(左)とダルビッシュ有【写真:Getty Images】

WBC世界の投手たちをピッチングストラテジスト・内田聖人氏が分析

 野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は日本代表・侍ジャパンの14年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。「THE ANSWER」は大会期間中、多くのプロ野球選手を含め400人以上が参加するパフォーマンスアップオンラインサロン「NEOREBASE」を主宰し、最速155キロを投げる自身を実験台にしてピッチング理論やトレーニング理論を発信するピッチングストラテジスト・内田聖人氏が、独自の目線で世界の投手を分析する連載を展開。今回は決勝を含め、日本の米国ラウンドを現地観戦した内田氏が大会を総括する。防御率1位を記録し、世界一の生命線となった侍ジャパンの投手陣から学びと発見として残ったことが3つあったという。「球速」について語った前編に続き、後編は「高めのストライクゾーン」と「データ」の活用について。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 ◇ ◇ ◇

 今大会の学びと発見の2つ目は「高めのストライクゾーン」の使い方です。日本は高めの変化球はタブーとされやすい文化があり、これは新鮮でした。

 大会を見ていた人のなかには「それ、ボールじゃない?」と感じた高めの球がストライクだったことがあるかもしれません。しかし、米国では数年前からストライクゾーンとして多く使われている印象があり、もともと取られていたコース。それを日本で駆使していたのが、ダルビッシュ有投手と大谷翔平投手でした。

 真っすぐはもちろん、スライダーも高めに刺す変化のさせ方をしている。特にダルビッシュ投手が投手陣にいろんな助言をしていました。今年の日本のプロ野球は、真っすぐも変化球も、高めへの投球が使われる機会が増えるのではないでしょうか。

 そして、横や奥行き(タイミング)の変化だけではなく、縦の幅が日本球界も一つのトレンドになる気がします。今は情報が早く、アマチュア球界にも波及しやすい。一方、高めは使い方が難しいのも事実。まず、ある程度の球速がなければならず、球速が出ない投手はやみくもに真似をしても打たれる可能性があります。

 また、高めに投げて有効なスライダーと、有効ではないスライダーがあります。例えば、大会中にお話ししたスイーパーは“落ちてこないスライダー”という球種。そういう球は高めに積極的に投げられますが、高めから落ちてしまうスライダーはバットに合ってしまう。当然、球速が遅いと球が落ちやすいので難しくなります。

 なので、高めを使うために必要な変化量、強度を求めていかなければいけない。自分なりの試行錯誤やトレーニングで、高めを使える“権利”を獲得する必要があります。高校生以上のある程度高いレベルで、球速を出すことを目標にできる投手は、高めを使えるか使えないか、自分なりに吟味していってもいい時代だと思います。

 そもそも、なぜ高めの変化球がタブーとされてきたかというと、前提として目から近いと打たれやすいという考え方があります。加えて、よくあるのが変化球の抜け球で本塁打を打たれること。結局、低めに投げようとして、失投の高めを打たれ、「ミスをして、高めを打たれた」という悪い印象が生まれる。

 悪い印象の方が強く残りやすいものですが、今はフライボール革命の影響でバットの軌道が低めから出る打者が多い。時代の影響もあり、決して今はすべてをタブーとしてしまうのは良くないし、むしろうまく使ってみた方がいい。だから、WBCで触れた米国流の野球に注目しながら今後メジャーリーグを見ても面白いです。

 今大会、日本の打者は高めの見逃し三振が少なくなかった印象です。高めのストライクゾーンは世界的に見ても日本のプロ野球はおそらく狭い。しかし、きっと向こう5年くらいの間にメジャーリーグと同じぐらいの水準のストライクゾーンになっていくと個人的には思っています。それはアマチュアも同じ流れでしょう。

 高めのストライクゾーンに打者はどう対応していくのか。逆に、投手は高めのストライクゾーンはどう使っていくのか。今後の動きとして注目したい部分です。

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