敗者すら「野球界の勝利」と語ったWBC史上最高の一戦 両軍指揮官の言葉に見たその価値
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表「侍ジャパン」は3大会ぶり3度目の優勝を成し遂げた。大谷翔平投手(エンゼルス)ら一流選手の団結力で掴んだ世界一。「THE ANSWER」では米マイアミで行われた熱戦を現地取材。大会を通じて伝えきれなかった選手、監督の思いや現地でのエピソードを連載「世界一の裏側」として連日紹介していく。
WBC優勝記念連載「世界一の裏側」#8、日本―メキシコ戦で感じた野球の本質
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表「侍ジャパン」は3大会ぶり3度目の優勝を成し遂げた。大谷翔平投手(エンゼルス)ら一流選手の団結力で掴んだ世界一。「THE ANSWER」では米マイアミで行われた熱戦を現地取材。大会を通じて伝えきれなかった選手、監督の思いや現地でのエピソードを連載「世界一の裏側」として連日紹介していく。
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第8回は劇的な結末となった準決勝メキシコ戦後の両軍指揮官の言葉。MLB公式にも「WBC史上最高の試合」と位置づけられた熱戦後、「野球ってすげえな」「野球界の勝利」の言葉どおり、勝者も敗者も野球の価値を再認識していた。
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1点ビハインドの9回無死一、二塁。不振の村上宗隆が中越え2点打を放ち、日本が6-5の逆転サヨナラで決勝進出。大会屈指の劇的な結末となった20日(日本時間21日)の試合後、両軍の監督はともに勝敗以上に大きなものを感じた様子だった。
先に会見に現れたメキシコのベンジー・ギル監督は「日本に脱帽せざるをえない」と真っ先に勝者を称賛した。
「どちらも敗者には相応しくないが、どちらかが勝たなければならない」
日本をあと一歩のところまで追い詰めながら敗れたことに、全く悔しさがないわけではない。ただ、熱狂する大観衆が見守る中、国と国のプライドをかけて好勝負を演じられたことにどこか誇らしさも漂わせているように感じた。
「両チームともに素晴らしいパフォーマンスだった。両軍ともに素晴らしいピッチングをし、どちらも一度たりとも諦めなかった。日本が勝ち進んだが、今夜、野球界として勝利を収めることができたと思う」
ギル監督はこの試合を「野球界の勝利」と表現した。WBCがいかに世界の野球界に重要か、試合前から訴えていたギル監督にとって、その素晴らしさを存分にアピールできる試合だったと感じられたのだろう。「メキシコでも急速に変化が起こる」。熱い思いの丈を語り終えた後、会見場からは惜しみない拍手が送られた。