福岡にある「欧州野球No.1エージェント」とは NPB新人王を移籍させた代理人の熱意
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)もいよいよ決勝を残すばかり。侍ジャパンは大谷翔平投手(エンゼルス)らの活躍で、日本を大いに盛り上げてきた。一方で、世界の野球に目を向ければ、2024年パリ五輪は競技から除外。予選の出場国は、209か国だったカタール・ワールドカップ(W杯)に対し、WBCは28か国に留まるなど、競技の普及・振興、国際化における課題も少なくない。
連載「ベースボールの現在地」#10、ヨーロッパに野球選手を派遣する日本人エージェント
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)もいよいよ決勝を残すばかり。侍ジャパンは大谷翔平投手(エンゼルス)らの活躍で、日本を大いに盛り上げてきた。一方で、世界の野球に目を向ければ、2024年パリ五輪は競技から除外。予選の出場国は、209か国だったカタール・ワールドカップ(W杯)に対し、WBCは28か国に留まるなど、競技の普及・振興、国際化における課題も少なくない。
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「THE ANSWER」ではWBC開催期間中「ベースボールの現在地」と題し、海外でプレー、普及活動してきた野球人の歩みや想いを連日発信。注目される数年に一度の機会だからこそ、世界の野球の今を知り、ともに未来を考えるきっかけを作る。第10回はオランダ発、在福岡の日系スポーツエージェンシー「Footrans(フットランス)」を立ち上げた長田康太郎氏。オランダ、チェコ、ドイツなど欧州各国に日本人選手を派遣してきた長田氏に、ヨーロッパ野球の現在を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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「ヨーロッパ野球No.1エージェント」
ツイッターのプロフィール欄でこう掲げているが、フットランスの業務は野球に限らない。サッカー、バスケ、ラグビーなど世界を目指すスポーツ人材を幅広く支援している。
立ち上げ人である長田氏は福岡生まれ大阪育ちの38歳。小学3年生から野球を始めたが、高校球児の頃から目指していたのはサッカーのエージェントだった。きっかけは高3の2002年に開催された日韓ワールドカップ(W杯)だ。「サッカーって世界中どこにでもあるんだ」と魅力を感じ、たまたまスポーツ雑誌に載っていたエージェントの仕事に興味を抱いた。
当時、日本サッカー協会(JFA)のエージェントは狭き門だった。試験の難易度も高く、推薦も必要。最年少合格者は、華々しい経歴の30歳だと知った。サッカー経験者でもないため、その年齢は確実に超えるだろうと想定。35歳に目標設定した。
ゴールに向けて、必要なものを逆算した。大学では法学部に進学。卒業後にカナダへ渡って英語力を磨きつつ、マイナーリーグの球団でインターンも経験した。帰国後もスポーツ系の仕事に就いた。27歳で日系企業のオランダ支店に転職。まずはサッカーの本場に行くことが大事だと見つけた求人に飛びついた。
3年間オランダで会社員として働いていた時、JFAのエージェント制度が登録制に変わり、門戸が一気に開かれた。いつでも登録できるため「今すぐ始める必要もない」と感じ、オランダ生活の継続を決定。2015年にはフットランスを立ち上げた。
環境、物理的な変化を表す「トランス」には、転勤族だった自分の経験を重ね、さらにスポーツ界で「移籍」を意味する「トランスファー」をかけた。「フット」は「フットボール」から。名前にもサッカーへの思いが表れており、今ではJ1選手と契約をするJFA登録仲介人、34歳で目標であったサッカーのエージェントにもなった。しかしオランダ時代に「ヨーロッパ野球No.1エージェント」に至るきっかけがあった。