MLB現場で聞いた野球人気復興とWBCの未来 トラウトら参戦の米国は本気になったのか
米国が軽視できなくなったWBC、野球人気復興へ果たす役割は
2006年から始まったWBCは、今年で第5回大会となる。エンゼルスで大谷と同僚のマイク・トラウト外野手を主将に据えた米国をはじめ各国ともに過去最高級のメンバーがそろっており、注目度も高い。
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大リーグのマンフレッド・コミッショナーは2月の記者会見で「これまでとの一番の違いは球団が選手を送り出すことに積極的になったことだ。準備に向けたサポート体制が整っていることも大きい」と述べた。前回の2017年は大会が始まってから徐々に盛り上がっていった印象だが、今回は多くの関係者の間で早くから「楽しみ」という声が聞かれている。
レッドソックスの球団編成部門トップを務めるブルーム氏は「最高にクールな大会。選手がWBCに出場するための準備を整えられるのであれば参加を止める必要はない。それは球団内の共通の認識であり、WBCに対する理解は深まっている」と言う。
その一方で、米国ではWBCに関する報道はあまりされておらず、日本の盛り上がりとは比較にできないほど静かだ。出場する選手に対するメディアの関心も、あくまでその後の「レギュラーシーズンへの調整にどう影響するか」ということが大前提としてある。それでも、スター選手が数多く参加することで軽視できないイベントになったとは言えるだろう。ツインズのファルビー編成本部長は「WBCはイタリア系やイスラエル系といった他国にゆかりのあるアメリカ人がそれぞれのルーツにもとづいて応援する機会にもなっている。大会が始まった当初は懐疑的な見方もあったが、数を重ねるうちにファンがそれぞれの楽しみ方を理解するようになった」と分析する。
大リーグ関係者によると、チケット販売も好調でスポンサー契約も増加。大リーグのポストシーズンなどを放映するテレビ局FOXが中継することも決まっている。大会を運営する大リーグが拠点を置く米国でも現場を中心に、以前に比べると関心が高まりつつあるのは歓迎すべき流れだろう。
レッドソックスのオーナー、ジョン・ヘンリー氏は「将来的には(サッカーの)ワールドカップのようになるのが理想。グローバル化が野球の発展のために重要」と述べた。大リーグのレギュラーシーズン直前となる開催時期やリーグ戦を中断して行うことの難しさなど、まだまだ課題は多い。それでも、2024年パリ五輪の実施競技から野球・ソフトボールが外れている現状、WBCが果たす役割は大きいように思う。野球の人気復興に本腰を入れ始めたベースボール発祥の地、米国を中心に、この流れがさらに加速することを期待したい。
(岡田 弘太郎 / Kotaro Okada)