「余命半年」宣告から4年 がんで胃の2/3を失い、死を覚悟した54歳女性 今もステージで追う夢
がんを克服し「人のために生きるように」
体力の回復を実感し、トレーニングを再開させようと思った頃に、今度はコロナ禍がやってきた。復帰した仕事も営業中止に。ジムも閉鎖される中で、療養中にはできなかった長距離ランに挑戦した。不織布マスクを着けながら、目標の10キロを完走。自信がまた戻ってきた。
2022年2月のマッスルコンテスト東京大会で選手復帰。女子ビキニ部門163センチ以下級で優勝した。夢だった海外挑戦も実現。10月にフィリピンの大会に出場し、マスターズクラスを制した。そして、今年の東京大会でも金メダルを手にした。
順調な復活劇に思えるが、当然ながら闘病前後で体作りの方法も大きく変わってくる。「イチからじゃなくてゼロからやり直し」だったというが、潤は「楽しいですね。大変じゃないです。これが誰かの役に立つから」と笑う。気持ちを前に向かせてくれたのは、自身もがんを克服したという恩師の本野氏の言葉だった。
「病気から復帰したときに、先生から『人のために生きることになる』と言われたんです。本野先生もがんを克服されてから人のために生きるようになった、と仰ってて。私の伝えるべきこと、私のすべきこと。神様がその役目をくださった感じです」
職場のクライアントにも病気のことを打ち明けた。自分が学んだことは出し惜しみせず伝えることにした。気付けば、復帰前よりクライアントの数は増えていた。
「伝えたことによって、『勇気をもらえた』『実は私もがんでした』と言ってくれる人がいまだに多いんです。『がんが見つかったけど、先生が元気になったのを見ているから、私も頑張ります』と励みになってくれているのが、凄く自分の中でモチベーションになっています」
余命半年の宣告から4年。胃の3分の2を失ったが、新たな生きがいを得た。次の目標を尋ねると、力強く言い切った。
「引退したくないです。キングカズを目指していて、生涯現役。また秋に海外に行きます。まだ決めてないですが、前回行けなかったベトナムを考えています」
これからは人のために。一度は止まってしまった夢を、潤は再び追いかける。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)